夏から秋にかけて、洋菓子店やスーパーで私たちの目を楽しませてくれる「夏イチゴ」。しかし、その栽培は非常に難しく、多くの生産者が頭を悩ませているのではないでしょうか。そんな夏イチゴの安定生産に向けてココカラ合同会社が開発したのが「ココカラピートYタイプ」です。今回の記事では、「ココカラピートYタイプ」を使用して夏イチゴ栽培に取り組まれた生産者様達からの声を元に、夏イチゴ「すずあかね」を栽培した際の最適な灌水方法をご紹介します。夏イチゴ栽培は難しい夏イチゴの栽培は「特に難しい」とよく耳にします。具体的に、夏イチゴ栽培の最大の難しさは、冬の栽培とは考え方が全く逆の、「いかに生育を抑えるか」という点にあると言います。夏は日射も気温も十分にあるため、水や肥料を与えると植物はどこまでも大きく成長しようとします。これが「過繁茂」という状態で、葉や茎ばかりが茂ってしまい、果実の品質が落ちる原因になるのです。夜間に培地の水分が多いと、果実が水を吸いすぎて実が割れる「裂果」を起こしたり、水っぽく柔らかい実になったりします。また、トマト栽培などで一般的な「日射比例潅水」をそのまま適用すると過湿になる可能性があります。そこで重要になってくるのが培地と適切な灌水管理です。夏イチゴ「すずあかね」の栽培方法をヒアリング今回ヒアリングさせていただいた生産者様が栽培していたのが「すずあかね」です。「すずあかね」は、果肉が硬く日持ちが良いため輸送性に優れ、ケーキなどの製菓材料として広く利用されている品種です。甘さと酸味のバランスもよくケーキ屋さんにも喜ばれるため、夏イチゴに挑戦しようとしている方にもおすすめだと注目されています。夏イチゴにココカラピートYタイプがおすすめの理由Yタイプはココファイバー(繊維)が多く含まれているため、排水性が非常に高い培地です。この物理的な特性が、「メリハリのある灌水」を強力にサポートします。与えた水が素早く抜け、夜間に向けて培地が乾きやすい環境を自然に作ることが可能です。Yタイプを使用した最適な灌水方法(参考)※30リットルのプランターにすずあかねを7株植える想定。ドリップは7個で、1株1個の配置です。灌水の基本方針は「朝はたっぷり、日中は補給、夜は乾かす」というサイクルの徹底です。一例として、次のようなスケジュールをご紹介します。朝のリセット潅水(5:00-6:00頃):15分程度の長めの潅水で、培地全体を均一な水分状態にします。日中の補給潅水(10時、12時、14時頃):晴天日であれば、2時間おきに3分程度の短い潅水を2~3回行い、日中の水切れを防ぎます。夕方以降は停止:夕方以降は完全に潅水を止め、夜間に向けて培地をしっかり乾かします。夕方の目標水分量になるように灌水することが重要です。例えばある生産者様の2025年8月の灌水量ですが、8月の場合、朝5時270ml/株、2回目以降90ml/株です。多い日は9,10,12,14,16時にそれぞれ灌水を行われています。目標水分量の設定方法生産者様にヒアリングしたところ、「ココカラピートーYタイプー」で栽培する際、定植から1週間程度は、培地の乾き具合や、pFメーターによる数値とのすり合わせ、排液の落ち方などを確認して、夕方6時頃のpF値に関しては1.7〜1.8が適当とのことです。灌水管理のポイント適切な灌水管理を成功させる上で、土壌水分センサーの活用が重要です。その際に見るべきは特定の数値ではなく、1日を通した水分量のグラフの波形で、山谷のあるメリハリのある波形になっていることが重要です。「朝の灌水で数値が上がり、夕方にかけてしっかり下がっているか」を日々確認することが、最適な水分管理につながります。温度センサーも併用すると、より精度の高い管理が可能になります。↑メリハリのある水分量のグラフイメージココカラ合同会社よりすずあかねのような夏イチゴを安定生産していくためには、「ココカラピートーYタイプー」のような灌水管理がしやすい培地と、IoT(水分センサー、温度、湿度など)の組み合わせが不可欠です。IoTといっても高価で大々的なシステムは必ずしも必要ではなく、農研機構が提案する「安価かつ簡便にハウスの遠隔監視に使えるIoT機器『通い農業支援システム』」のように、ハードルを下げて取り入れられるものもあります。出展:農研機構「安価かつ簡便にハウスの遠隔監視に使えるIoT機器『通い農業支援システム』」ココカラ合同会社は、今回の「ココカラピートーYタイプー」の発売をきっかけに、まずは、栽培が難しいとされている夏いちごの「すずあかね」の栽培をYタイプ×IoTでもっと簡単にできるよう、栽培支援を進めてまいります。よくあるご質問Q:ココカラピートYタイプは排水性が高いため、乾燥しやすいのではないでしょうか。夏いちごの栽培で表面が乾かないか心配です。A:いちごの根は、太い根が下へ、細い根が上へ伸びる傾向があります。混合培地で夏いちごを栽培されていた生産者の方は、ココピートを使用すると細い根が表面にないことで不安を感じるかもしれません。しかし、ココピートは表面が乾いていても培地内部には十分な水分があります。逆に、表面が常にしっとりしていると加湿気味になる可能性があります。 夏いちごの場合、加湿は根に良くないため、表面の水分については気にしなくても問題ありません。Q:夏イチゴにはなぜ排水性の高い培地が適しているのですか?冬いちごと夏いちごの栽培における違いがあれば教えて下さい。A:夏いちご栽培では高温になるため、水中の酸素飽和度が低くなります。培地の密度が高いと水が留まりやすくなり、根が必要とする酸素量が不足して根が窒息してしまう可能性があります。そのため、根に新しい酸素を供給することが重要になります。「ココカラピートーYタイプー」のような排水性の高い培地(水の通りが良い培地)を使用することで、培地内に新しい空気を取り込むことができます。また、夏いちごは温度を下げる役割も含め、冬いちごに比べて約5倍の灌水量が必要になることがあります。密度の高い培地よりも排水性の高い培地の方が水が滞留しにくいため、夏いちご栽培には適していると言えます。Q:夏イチゴの最適な灌水方法・タイミングを教えて下さい。A: 基本的には少量多潅水が推奨されますが、いちご苗には個体差があり、水の吸収量にもばらつきが生じます。水を多く吸収する苗の周りの培地は乾燥しやすくなり、培地内の水分均一性が損なわれる可能性があります。そのため、1日1回、多量の灌水を行うことをお勧めします。これにより培地内の水分をリセットするような効果が期待できます。いちご苗が水を吸収するピークは日の出から2時間後であるため、そのタイミングで十分な水を用意することが大切です。最初の灌水は日の出と同時に行うのが理想的です。日の出から2時間後では遅すぎる可能性があります。