<目次>施設園芸など養液栽培において、園芸培土(培地)は栽培の要の一つです。培地の種類は多様で、その中でもココピート(注:cococaRaでの製品名はココカラピート)、ロックウール、ピートモスの3種がよく使われています。ここではココピートとロックウールの違いについて解説します。ココピートとロックウールココピートとロックウールは、どちらも保水性が高いことから、「何が違うのか?」とご質問いただくことが少なくありません。詳しく解説する前に、その違いを簡単な表にまとめました。まずはロックウールからご説明いたします。ロックウールとは玄武岩や天然岩石などを1500〜1600℃の高温で溶解した後、遠心分離により繊維状に固めた人工の鉱物繊維で、いわゆる人工/無機培地(培土)の一種です。また、工場施設やビルなど建築物の保温や防火・耐火材としても非常にポピュラーです。無機培地としてのロックウールの最大の特徴は化学的に不活性である点です。培養液の組成にほとんど影響を与えないため、注入した養液や水が作物に直接的に影響を与えるので栽培管理がしやすいことが特長です。ただし、水を与えすぎると過湿になるため排水対策をきちんと行う必要があります。 ロックウールを利用する主なメリットロックウールを用いた栽培を行う上で、主に下記のメリットが挙げられます。EC管理が容易:培地内の水分と肥料濃度を数値的に制御しやすいです。均一性が高い:素材が無機物であり、個体差が少ないため、生育ムラが出にくいです。乾湿コントロールが明確:吸水・排水が予測しやすく、精密な潅水制御が可能です。軽量で扱いやすい:設置や交換が容易です。ロックウールを使用する上での注意点特に非循環型においては、肥料成分が外部に放出され環境汚染につながることを懸念しなくてはいけません。それゆえロックウールを使用する場合は、最先端の環境制御システムやドリップ灌漑システムなどで綿密かつ適正に管理をする必要があります。 加えて、ロックウールを使用する場合に最も課題になるのは使用後の処理方法です。一般的な方法は、専門業者に委託して埋め立て処理をします。ただし、非常にコストがかかる上に、環境に配慮した方法とは言えません。委託の上リサイクルをする方法もありますが、こちらも運搬費を含めて高額です。また、近年都道府県によっては、委託の価格が上がっているところも多くあり、経営を圧迫する場合があります。ココピート(ヤシガラ培地)とはココヤシのハスク(中果皮:ココナッツの殻の内皮にある繊維や粒)を原材料として、0.1〜10mmに粉砕した粒を利用した有機培土です。 主な生産国はインドやスリランカで、有機質100%であること、高い保水性を持つことから、多くの国で使用されています。もともとマットやロープなどのヤシ殻製品を作る際に捨てていた部分を活用・加工しているので、原材料の調達方法も地球にやさしいことが大きなメリットになります。 地球環境保護への関心が高まる中、産業廃棄物であるロックウールや土地を掘り起こして採取しているピートモスに代わる環境配慮型の土壌改良材として、ヨーロッパやアメリカを中心に普及が進んでいます。 ココピートを使用する主なメリットココピートには主に下記のメリットが挙げられます。再利用・復元が可能:乾燥後も多冠水で元の含水状態に戻すことが可能です。2年以上ご使用いただいている実例も多数あります。環境にやさしい素材:100%有機物由来で、産業廃棄物処理が必要ありません。pH調整が不要:天然pHが5.5〜6.5で、栽培に適した範囲に安定しています。保肥性・緩衝性に優れる:CEC(陽イオン交換容量)があり、肥料成分を保持しやすいです。微生物環境が良好:トリコデルマなど有用微生物を含み、根圏環境を健全に保つ効果が期待できます。排水・保水性を調整可能:チップと繊維の比率を変えることで、作型(春定植/夏越しなど)に応じた最適化ができます。ココピートを使用する上での注意点ココピートは有機物なので窒素が入るとCN比が低くなりいことでり発酵が始まり、培地の固さが変わる、保水性が変わる、培地量が低くなるなど、物理性が変化し、やがて堆肥へと変わっていきます。またココピートは使用する椰子の種類や産地、製造工程、場所(微生物の種類が異なる)によって大きく品質が異なるため、その点を見極める必要があります。製造段階での堆肥レベルがバラバラ(色が黄色だ、茶色、黒色など)だと最初からばらつきが生じます。たとえば黒色のココピートが多い場合は堆肥になる速度が早くなるため、たった1年で物理性が変わり使えなくなるケースもあります。※粒の腐植度(堆肥レベル)が違う粒が混ざっている場合、バッグ内の物理性もバラバラに進みますココピートとロックウールの栽培での比較ロックウールロックウールは、最大で90%の植物が吸収できる水を保持でき、無機培地のため、肥料が吸着しません。しかし、ほとんどの肥料は排水に含まれて流れてしまいますのど要注意です。また、ロックウールを使った栽培は、作物が病気になりやすいというデメリットもありますので注意が必要です。ココピートココピートは、ロックウールに比べCEC 値が高く、特に根の発育を促進させるカリウム・硫黄の吸収が高く、作物の発育が良い特徴があります。また、保肥性も高く、安定した栄養素を根から吸収・ 放出する力に優れています。ココピートにはトリコデルマ菌が存在 するので病気にも強い傾向にあります。ココピートは光合成が高く、トマトを甘くするグリコースも多く 含まれ、重量、収量もロックウール より高いです。しかし、物理性が変化しやすく、ものによって品質が異なるため、良いものを見極めることが難しいことが最大の難点です。まとめココピートとロックウール、それぞれのメリットと栽培上の注意点を解説しました。それぞれのメリットを踏まえ、高精度で短期サイクルの栽培を求める場合はロックウール、環境負荷を低減させながら、安定的長期栽培を目指す場合はココピートが最適な培地として考えられます。ココカラでは、生産者の方に、品質に納得してご購入いただくために、無料サンプルの提供もしております。ココピートとロックウールを使用するかお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。