千葉県東金市にある植竹農園で美味しいトマトづくりを行う植竹佑介さん。農業法人で10年間の経験を積み、その後独立して自らの農園を立ち上げました。2022年からココカラのグローバッグCP4をご活用いただき、現在3作目です。植竹さんは「美味しいトマトを作りたい」という強い想いと、趣味であるバンド活動を両立させるユニークなスタイルで日々奮闘しています。今回は、植竹さんのこれまでの歩みと現在の取り組み、そして今後の展望についてお話を伺いました。▲今回お話してくださった植竹さん農業法人での経験と独立への想い高校も農業高校で、そのまま県立の農業大学校に進みました。卒業後は求人広告で見つけた農業法人に入社し、最初は栽培担当として現場作業を中心に取り組みました。3年後に農場長が独立して退職したため、私が後任として農場長を務めることになりました。経営的なことも学びつつ、数字に追われる日々でしたね。元々、自分で農業をやりたいという夢があったので、35歳までには独立しようと考えていました。運良く適した土地と中古のハウスを貸してくれる方を中間管理機構に紹介していただき、独立することができました。独立する時には、日本政策金融公庫の借入制度と農林水産省の経営開始資金という補助金制度を活用しました。日本政策金融公庫の制度は無利子でお金を借りることができるというもので、経営開始資金は農業経営を始めてから経営が安定するまでの3年間、年間最大150万円を交付する制度です。独立する前にいろいろなシミュレーションをして、初年度の収支もほぼ計画通りに進みました。もちろん物価高騰で資材費が跳ね上がったのは想定外でしたけど、補助金この2つの制度があったおかげで乗り切れました。独立後の試行錯誤と味へのこだわり独立してからは、「いかに美味しいトマトを作るか」に全力を注いでいます。1年目は塩トマト栽培に挑戦しました。塩トマトとは、栽培液に少量の塩分を加えることで、水分吸収を抑えて果実の糖度を高める手法です。ただし、塩分濃度の管理が非常に繊細で、糖度が上がる一方で収穫量が安定しないという課題に直面しました。この経験を踏まえ、2年目には魚由来のアミノ酸を含む有機肥料を導入。有機肥料はトマトの味を濃くする効果がある一方で、灌水チューブが詰まりやすくなるという新たな課題が発生しました。3年目の現在は、2年目に叶ったおいしさを守りながら課題を解決するため、有機肥料と無機肥料を組み合わせたハイブリッド栽培に切り替えています。肥料の種類や配合を調整しながら、味や品質への影響を試行錯誤しています。私のやり方は「とにかく気になったことは試してみる」ですね。やらないと気が済まない性格なんです。栽培はもちろん、売り上げや粗利がどれだけ増えたかなど数字を見るのもやっていくうちに好きになっていって。売り先を自分で考えるのも楽しいです。実際、農業法人にいた時も売り先の開拓は自分の担当でしたし、独立してからもその経験が活きています。▲植竹農園のハウスで育てられているトマト味を第一に考えるトマトづくりトマトづくりを行う上で大切にしていることは、経営が安定する範囲内で味を第一に考えた栽培です。この精神の根底には、亡き父の言葉があります。昔から食べ物の味にうるさい人だったので、私が農業をする時も「せっかくやるなら、つまらないものを作るな」とよく言ってきたんですよ。うちはカラートマトの栽培をしています。カラートマトは見た目の美しさだけでなく、味わいの個性が際立っており、多くの品種が持つ独自の特性を生かすことで、他との差別化を図ることができます。また、糖度を高めるための水管理や、甘さと酸味のバランスを取るための栄養調整など、品種ごとに異なるアプローチが必要です。さらに、果実の硬さや食感を程よく保つよう、繊細なバランスを見極める作業を繰り返し行っています。トマトは無数の品種があり、それぞれに異なる特徴があります。葉の色や形、果実のつき方、味の個性など、一つひとつに向き合いながら、自分が納得できる味を追求することは、単なる顧客満足のためだけではなく、私自身の楽しみでもあります。この試行錯誤の積み重ねが、父の教えに応えることであり、私自身の農業に対する誇りとやりがいにつながっています。▲植竹農園で栽培されているカラートマト趣味のバンド活動とモチベーション維持実は、趣味でバンド活動をしています。農園のハウスにはギターやドラムを置いていて、時間を見つけて演奏するのが日課です。農業はどうしても毎日同じ作業の繰り返しになりがちで、特に忙しい時期には心身の疲れが溜まることもあります。だからこそ、音楽やダーツといった趣味を通じてリフレッシュする時間を大切にしています。農業に没頭しすぎてしまうと気持ちも追い詰められてしまいがちですが、こうやって楽しいことがあると「農業がダメでも音楽がある」ってメンタルを保つことができる。こうして、自分の中で農業と趣味をバランスよく両立させることが、長く続けるための私のスタイルだと思っています。▲(左)植竹農園のトマトハウスにあるドラム (右)外にはダーツもまたモチベーションを維持するために、趣味だけでなくビジネスの話をする機会も大切だなと最近改めて思いました。というのも先日、経営者の方と話す機会があったのですが、色んな目新しい情報とかを教えてくれました。それをやるかやらないかは別ですが、シンプルに楽しいなって思ったんです。実は最近ちょっと落ち込み気味だったんですけど、また自分の農園で頑張ろうって思えました。今後の展望現在使用しているココカラの培地は3年目のものですが、有機肥料を使っているということもあり、2年で培地を更新するのが生育に良いと思いました。廃棄する培地は土壌改良材として再利用し、果樹栽培などの新しい試みにも挑戦したいと考えています。トマト栽培については、将来的に農園の面積を無理に広げるのではなく、トマトの味や品質にさらに磨きをかけることを第一に考えています。これからも、自分が納得できる美味しいトマトを安定して作り続けることで、経営も安定させながら、自分自身の好きな活動や趣味も大切にしていきたいですね。インタビュー日時2024年10月30日訪問先植竹農園 / 植竹 佑介氏 / 千葉県 東金市公式ホームページhttps://www.instagram.com/uetake.farm/