兵庫県尼崎市猪名寺の住宅地でイチゴのハウス栽培に取り組む、ささはら菜園代表の笹原篤史さん。「街にも採れたてを」をモットーに、業者へのイチゴの販売だけでなく、近隣エリアでは希少なイチゴ狩りや、夏限定のかき氷屋さんも運営しています。その動向にメディアも注目し、地元の方だけでなく、遠方からもお客様が訪れています。2023年からココカラピート(グローバッグCP2)をイチゴの養液栽培にご使用いただき、2024年には2作目を迎えます。街中という立地で農業の新しい可能性を追求する笹原さんに、今回お話を伺いました。▲インタビューを受けてくださった笹原篤史さんイチゴ栽培のきっかけはなんですか?ー新規就農を決めた経緯僕はもともと、農業とは無縁でした。就職活動の際に偶然、高糖度トマトを海外へ輸出する会社に出会い、そのトマトの甘さに感動して。育て方でこんなにも変わるのかと、栽培に興味を持ち始めました。無事、その会社に内定をいただいたのですが、農学部出身の方ばかりが集まっている会社であることがわかり、自分の経歴(文学部)は珍しい存在でした。そこで、片っ端から農業の本を読んで勉強したり、トマト農園へお願いし、修行という形で働かせてもらいました。そうして栽培に携わるうちに、「自分が生産者の立場となり栽培したい」という気持ちに気がついたのです。同時期に、稲作をしていた親戚から「高齢のため引退を考えたい、つまり、土地が余ってしまう」という相談が舞い込みました。さらに、国の新規就農者支援施策(ミニハウスの半額補助等)の補助金制度がまもなく終了するというタイミングでした。これらの環境条件が偶然重なり、不安はあれど、もうやるしかない!と、新規就農という未知の世界へ飛び込みました。ーイチゴ栽培を決めた経緯イチゴに決めた理由は、都会という立地と小規模であることです。尼崎エリアのイチゴのニーズや、イチゴは輸送に不向きであり地場産が強い点など、この土地の特徴を活かせる栽培について考えるとおのずとイチゴ栽培に絞られました。実際、「朝取りで完熟」というキーワードは、他の栽培方法の謳い文句よりも圧倒的に顧客への美味しさが伝わると僕は思っています。「朝取りのイチゴを使ったケーキ」などは、飲食店のメニューでも喜ばれますよね。実際に新規就農してみて、苦労したことはありますか?栽培については、日々の小さな失敗や課題は沢山あるのですが、大きな苦労は少なく順調に進めることができています。ささはら菜園を始める前の3年間、イチゴ農園での修行を積んでおり、移住もして、みっちりと学んだお陰かなと考えています。しかしながら、都市部エリアならではの苦労はありました。住宅街での農業は周りへの配慮がとても大切です。まず農園へたくさんのお客様が来られるとなると、お隣の民家にはもちろん、閑静な住宅環境に人が集まってしまうため、近隣の方との関係性構築が必要です。また、イチゴの電照栽培は「夜中に眩しくて困る」というお声があるため、照射の時間帯も配慮します。機械音もエンジン式は音が大きく住宅地には向かないので、モーター式のものを使用しています。コストはかかるけれども、長く農業を続けるなら必要だと考えています。▲住宅街にある、ささはら菜園のイチゴハウス栽培に関する情報収集はどのようにしていますか?情報アンテナを常に張るようにしています。お世話になったイチゴ農園に高い技術力を持っておられる師匠がいるので、年に何回かは出向くようにしています。そこで、栽培状況を報告したり課題を共有したりと、関係性を大切にしています。もちろん農業の書籍も読みますが、常に動きながら情報を入れるようにしてます。資材についてはココカラの情報も定期的にチェックしていますよ。「試験的栽培」や「移動式イチゴ狩り」にも挑戦現在は、育苗ハウスでイチゴを育てるという方法を試みています。土が入っている袋にそのまま穴を開けて株を植えてみたり、プランターでやってみたりと色々試していたところ、ココカラバッグに出会いました。ココカラバッグが1番便利だと思う点は、栽培向けに使いやすい設計が既にされてるところです。例えば、わざわざ土を入れたり、穴を開けるというような作業をしなくて良いので、とても使い勝手がいいなと思っています。僕の中で培地の今の最適解はココカラピートですね。▲育苗ハウスでのイチゴ栽培の様子また、最近の面白い取り組みとして、イベント会社さんとココカラバッグのイチゴ苗をショッピングモール内に持ち込み、「移動式イチゴ狩り」を楽しんでいただいたこともあります。輸送するとイチゴが痛むので、どうしても遠方からの納品は難しいですが、生産地と消費地が近いからこそできるイベントだと感じました。▲「移動式イチゴ狩り」イベントの様子イチゴ栽培のやりがいを教えてください僕、農業そのものが好きなんです。手をかけたイチゴが成長するのを見るのも、工夫して販売するのも、やりがいがあります。また、農業は事業を展開する上での選択余地が広いところも魅力だと感じています。例えば、栽培して出荷することを軸として、その他にイチゴ狩りや、カフェ事業を展開することもできます。経営者として次の事業を考えている時もワクワクしますし、現場で栽培している時も楽しいんです。天職なのかもしれません。笹原さんが目指すゴールはなんですか?挑戦したいことはまだまだ沢山あります。現在は、JA直売所や洋菓子店、百貨店、スーパーなどへの販売だけでなく、5月から6月にかけてはイチゴ狩りも行い、併設カフェではイチゴの直売や、夏場限定で自家製イチゴのみを使用したかき氷を提供しています。また、ほぼ独学で養蜂もしています。今期はイチゴと養蜂と併設カフェを組み合わせ、ささはら菜園ならではのパンケーキの販売もしたいと考え、現在進めているところです。ハウスの規模拡大というよりは、イチゴの付加価値をどうやったら高めることができるか、どうすれば消費者の方に楽しんでもらえるか、工夫できることはまだまだあると思っています。▲ささはら菜園のイチゴインタビュー日時2024年2月1日訪問先兵庫県 尼崎市 / ささはら菜園 / 笹原篤史 氏 公式ホームページhttps://www.sasaharasaien.com/Instagramhttps://www.instagram.com/sasahara_saien/