山梨県甲州市にあるイチゴの観光農園「竜太園」さん。イチゴづくりを始めて2024年で15年目を迎えます。2018年からココカラブリケットを導入、現在は新たにスラブもご使用いただき7作目です。彼女が家族のために始めたこの農園は、今では多くのリピーターに愛される人気のスポットとなっています。今回は、滝嶌さんがイチゴ栽培を始めたきっかけから、日々の挑戦、そして今後の展望までうかがいました。▲お話ししてくださった竜太園の滝嶌由美さん家族のための一大決心:イチゴ栽培への挑戦イチゴ栽培を始めた理由は、家族のためだったんですよね。もともとはブドウとサクランボ栽培をずっと続けていたんですけど、3人目の子どもが大学に行くってなった時、ブドウやサクランボだけじゃ厳しいかもなって思ったんです。それで近所の人から「私みたいにイチゴをやってみたら?」って勧められたんですけど、最初は断っていました。だって、初期投資も大変でしょ?ビニールハウスも設備も全部揃えるには莫大な費用がかかるから。それでも、5年間説得してもらって、ようやく「じゃあやってみるか」って決めたんです。ブドウやサクランボでついていたお客さんもいたし、イチゴなら冬から春まで5ヶ月間は収穫できるから、安定した収入も見込めます。もしイチゴがうまくいかなかったら、施設をそのまま使ってトマト栽培にも切り替えられるし。それで「やってみるか」って決意が固まったんです。大変だけど奥深い、イチゴ栽培イチゴ栽培を始めてすぐに気づいたのは、思ってた以上に大変だってこと。収穫が終わったと思ったらすぐに次の準備が始まるから、片付けたらすぐに苗を作って、今度はベンチ作り、そして定植。時には力仕事もあるし、1年中何かしらすることがあります。何歳までできるかな、って思うこともあるけど、イチゴの栽培はなかなか奥深いんですよ。最初は「土じゃなくてココピートで育てるんだ」というところも驚きでしたし、色んな品種があって、苗の特性によって栽培も変える必要がある。考えてやってみる、の繰り返しで栽培していて楽しいんです。▲竜太園のイチゴハウス失敗も学びに変え、栽培方法を日々改良ーこれまで失敗もたくさんイチゴ栽培を始めた当初は、何もわからなくて手探りでした。だから、最初は『章姫』と『紅ほっぺ』しか植えなかったんです。だんだんと慣れてきて、3年目くらいから、色んな品種や育て方を試すようになりました。もちろん、うまくいくものもあれば失敗することもあって、その度に勉強の繰り返し。たとえば以前に、買った苗に炭素が入っていて全部枯れちゃったことがありました。それからは、もう自分で苗を作ろうって決めたんです。自分でやって失敗するなら納得できますし、それなら技術を磨けばいいだけですからね。ー育苗用のベンチも自身で考案。作業性が上がり、病気のリスクも低減あとは育苗用の『ひな壇式』のベンチも、自分で考えたんですよ。旦那に「こういうのを作って欲しい」って頼んで、ベンチを作ってもらいました。それで水管理がしやすくなったし、病気のリスクも減らせたんです。イチゴ栽培って本当に奥が深くて、毎年新しい情報が出てくるんです。だから、最近はYouTubeも使って栽培の勉強をしてます。毎年やり方を変えていかないと、すぐに遅れちゃうんですよね。イチゴ栽培の動画はほとんど観ています。何事も適当にやると、それなりの結果しか出ないですから。▲滝嶌さんお手製の育苗用のベンチみんなで一緒に作る、イチゴの未来ー視察の受け入れ今は視察の受け入れもしてます。色んな人がうちに来て、私たちの栽培の様子を見ていくんですけど、みんなで情報を共有することも大事なことだと思ってます。私も他の人の話を聞いて勉強になりますしね。一人じゃない、みんなで作っていくんだっていう気持ちを常に持っています。だから、私も迷ったら色んな人に聞きますよ。ーお客さんの意見を元に、新品種開発の試験栽培もそれに、三好アグリテックさんのイチゴの新品種開発の試験栽培にも協力させてもらってます。うちには「グルメコース」って名前を付けた、三好さんの新品種を試作するためのベンチがあって、そこで色んな品種を育てて試してるんです。観光農園だからこそ、リピーターのお客さんに試作中の品種を食べてもらって、味のフィードバックをもらうようにしてます。お客さんの意見って本当に大事で、味の繊細な違いも見抜いてくれるんです。「どうでした?」って聞いて、率直な意見をもらえるのも勉強になっています。▲試験栽培中のイチゴが食べれる「グルメコース」滝嶌さんの今後の展望は何ですか?もっと色んな品種をお客さんに楽しんでもらいたいですね。品種によって肥料のやり方も違うし、収穫のタイミングも変わります。最初にも言いましたけど、イチゴって本当に奥が深いんですよ。最近は、私の息子も一緒にイチゴ栽培について勉強してくれています。私がYouTubeで見た栽培のやり方を教えたり、息子も自分なりに学んだことをシェアしてくれるんです。もしかしたら今後は温暖化も進んでイチゴは作れなくなるかもしれないので、「その時代に合った作物を臨機応変に育てられるように、視野を広く持つように」と息子には常に言っています。息子いわく、この農園を継いでくれるみたいなので、その時は大変なこともあるけど栽培の楽しみ方を覚えて、思うようにやって欲しいです。▲ベンチにココカラスラブをセットする、滝嶌由美さん(左)と息子さん(右)インタビュー日時2024年8月1日訪問先竜太園 代表 / 滝嶌由美氏 / 山梨県甲州市塩山牛奥3453公式ホームページhttps://www.ryuta-en.com/