おおもり農園は岡山市中区にある、イチゴの農業生産法人です。就労継続支援A型事業所「杜の家ファーム」と連携し、障害のある人々と共に仕事に取り組んでいます。2017年よりココカラピート(グローバッグCP2)を導入、今季で7年目を迎えます。「農福連携」と「地産地消」を合言葉に、地域に根付いた法人を目指す、株式会社おおもり農園の代表、大森一弘さんにお話を伺いました。▲インタビューを受けてくださった大森一弘さんイチゴ栽培を始めたきっかけ、こだわりは何ですか?ーきっかけ2002年に夫婦2人で10アールのイチゴ農家としてスタートしました。岡山というと、桃やマスカットなどの果物が有名だけれど栽培には面積が必要で。イチゴであれば面積がなくても栽培できるかなと。市内にあまりイチゴ農家がなかったことも理由の一つです。ーこだわり最初はロックウール培地を使用した水耕栽培をしていましたが、暑すぎて花芽が分化しないという課題や、栽培後のロックールの処理問題が出てきました。そこで、有機培土であるココピートを導入しました。「よつぼし」という品種を栽培していますが、ロックウールに比べ生育が良いと感じています。天敵農薬にもこだわり、品質の高い減農薬栽培でイチゴを育てています。農園から岡山市中心部までは車で15分程度です。自社の冷蔵車を持っているので、十分甘みが出るまでじっくり育てた、採れたてのイチゴを出荷することができます。消費地のそばで栽培しているからこその「地産地消」という強みを発揮できる生産体制です。「農福連携」のきっかけ、工夫したことは何ですか?ーきっかけ農福連携のスタートは、2002年に農の福祉力(障がいのある人の雇用促進)というシンポジウムへ参加したことがきっかけです。農業の後継者不足によって栽培者の高齢化が進む中、「継続できる農業ってなんだろう?」と考えていた矢先に、農福連携という雇用方法を知り、継続できる農業は人(担い手)が鍵になるという考えに行き着きました。そして、ちょうどその頃、近隣の社会福祉法人から「障害者の方を派遣するので働かせて欲しい」との希望があり、受け入れたのが始まりで、農と福祉の連携に取り組みました。2020年には、農福連携の取組みによって生産された商品の農林規格である「ノウフクJAS」という、岡山県初の認証を取得しています。※岡山県で4社が同時に認証を取得2024年には、ノウフクアワード2023表彰24団体の発表があり、当園も優秀賞を頂きました。※ノウフク・アワード2023についてはこちら▲(左)ノウフクJASマーク /(右)おおもり農園の直売所ー工夫したこと農作業を「階層分解」することと「利用者カルテ」を組み合わせることによって、わかりやすく一人に一つの作業を託すことができるようにしました。階層分解の例として、イチゴの重量選別があります。個体の大きさを通常よりも細かく分け、重量を測りやすくしました。これ、口では簡単に言えるのですが、農家は毎日忙しいので、なかなか作業を階層分解するのが難しいんです。また、うちには利用者さんそれぞれのカルテがあります。例えば、体をひねることができるのか、立ち仕事と座り仕事のどちらが向いているのか、両手で行う作業なのか片手なのか、イチゴを潰さないように持てるか、綺麗に置けるか、、、など。このように、細かく分解された作業と、それぞれのカルテを照らし合わせて、一人一人のできることを判断していきます。ちなみに、階層分解とは関係ないですが、秤は動物の鳴き声が鳴る試作機をテスト導入しており、聴覚的にわかりやすくするという工夫もメーカーさんと一緒に行っています。▲従業員の方がサイズを細かく分け、選果する様子2018年の記録的豪雨、どう乗り越えましたか?▲水害の写真イチゴを使った新商品を開発しようと試作や検討を重ねていた2018年7月。 岡山県の豪雨災害で、私たちのハウスも壊滅的な被害を受けました。ココカラのグローバッグも見事に水に浸かって浮いてしまっていました。今では笑って話せますが。この冬から本格的に収穫できるぞ、というタイミングだったので経営的にも大打撃でしたね。次のシーズンの生産量激減が確定したので、少しでもイチゴの加工品などを充実させなければ立ち行かなくなる、と焦っていた頃、災害時の小規模事業者持続化補助金が出るかもしれないという話になり、たった1つのチャンスに藁にもすがる思いで応募し、無事採択されました。豪雨災害の前から少しずつ開発を進めていたことが功を奏し、補助金の力を借りて一気に商品化しました。あの頃はみんな(従業員)の頑張りに本当に励まされましたね。▲独自開発したカクテルシロップ「苺のしずく」目指すのは、地域連携と「取り残さない」という想い私は、障害者の方の就労の場作りとして特別なことをしている、と捉えているわけではないです。ただ、農業でみんなが元気になっていくことにもつながるし、「取り残さない」ようにしたいという想いがあります。経営者である以上、従業員さんの生活を背負っていくことへの責任感があります。家族を持つ方もいますし、みんな生活がかかっているんです。障害を持たれたからというだけではなくて、多様な背景があって働くことが困難な方々はたくさんおられると思います。そんな方々の働ける場としても、農業には可能性があると感じます。また、子供の食育、お年寄りの認知症防止、リハビリの場としてなど、農業はいろんな世代を受け止めるだけの幅があります。一言で言い表すなら「農業は包容力がある」。一次産業には、いろんなものを受け入れる許容力があると思っています。農業も捨てたもんじゃないね。ですので、これからも地域連携、そして農業の多様性を追求できればと思います。▲おおもり農園のイチゴインタビュー日時2024年1月12日訪問先岡山県 岡山市 / 株式会社おおもり農園 / 大森一弘 氏 公式ホームページhttps://omorifarm.jp/Facebook https://www.facebook.com/omorinouen