地主守さんは兵庫県の淡路島にある「株式会社 淡路の島菜園」の専務取締役として、イチゴやトマト、メロンなどの栽培管理をしておられます。前編(記事はこちら)では、栽培や農ビジネスの経営に対するストイックなお考えをお話いただきました。後編では、なぜここまでストイックに向き合うことができるのか?を解明すべく、地主さんの生い立ちやその過程で生まれた「農業を変えたい」という熱い想いに迫ります。▲インタビューを受けてくださった地主さん。イチゴピクニックができるハウスでお話を伺いました。農業に対して良いイメージを持てなかった子供時代僕の実家は林業の苗屋さんで、父が3代目でした。農家育ちなので小さい頃から家業を手伝っていましたが、自分が農家の息子であることがどこか嫌で、親がサラリーマンだという友達を羨ましく思っていたんです。農家ならではの土間でみんなでご飯食べることとかも嫌だったのかもしれません。結局、父も僕がまだ学生の時に家業をやめて他業界に転職したんですけどね。「農業=臭い、汚い、儲からない」というイメージが世間では広がっていて、どこか下に見られている傾向がありました。それに比べ、IT業界は勢いのあるような時代でした。今思うと、そういう背景から「農業界を変えたい」という想いが漠然と生まれていたんだと思います。「農業界を変えたい」という熱い想いを胸に進学、そして就職正直、農業自体はあまり好きだと思っていなかったけど、大学も農学部を選び進学しましたし、就職活動でも農業界を中心に受けました。大学在籍中も「自分なりに農業界を変えたい」という想いはずっと変わらず持ち続けていて。本格的に農業の課題について自分の考えを持つようになっていたので、就活では農業に対する自分の考え方を取り繕わずに話し、それを受け入れてくれる会社に入ろうと決めていました。そして、一番相性が良かったのが大手人材会社のパソナという会社だったため、パソナで農業ビジネスをしたいと思い入社を決意しました。パソナでは新規事業の立ち上げ部署に配属されました。パソナ時代も農業のあり方についての違和感は強くなる一方でした。例えば、誰でも簡単に参入できちゃう業界であることとか。IT業界や自動車業界だったら絶対にこんなに簡単に一個人が参入することはできないよな、と。現社長である大森さんとの出会いもともと、社長の大森一輝さんは個人事業としてミニトマトの生産・販売をしていて、僕がパソナで営業活動をする中で、大森さんと出会いました。そこで大森さんにいろいろと指摘され、僕もプライドが高かったからむかついて(笑)。「そんなに言うなら、どんなもんなのか、僕にも栽培させてください。」と言ったのが始まりです。休みの日に大森さんの元で栽培を手伝わせてもらうようになり、大森さんと色々とお話をしていくうちに、お互いにお互いの考えを理解できるようになりました。そして最終的に、「地主が入るなら、法人化する。入らないならこのまま個人でやる。さあどうする」と大森さんに持ちかけていただいて、当時の僕は25歳でしたが即決で入社を決めたんです。当時は、まさか自分が生産者になるとは思っていなかったですね。▲社長の大森さんと地主さん。若い世代が憧れる農業界にしたいー他の業界に勝る魅力を農業界に農業界も年収1000万稼げる業界であるべきだし、次の世代にその状態で農業界を渡したいと思っています。だから、僕は25歳の時にこの会社の社員という形で年収1000万円を目指すと決めました。それは自分のためじゃなくて、次の世代が来たいと思える業界に変えないとダメだと思ったから。若い世代が、既存の超大手人気企業とうちの会社とで入社を迷うくらいにしたいんです。そのためにも、僕は農業で年収1000万稼げるになる人になる必要があります。じゃあ実際に1000万稼ぐにはどうしたらいいのか考えていく中で、 この淡路の島菜園という会社で経営規模を広げていく必要があるという結論に至りました。ー農業界はもっと面白い業界にできるやっぱり伸びてる産業って若い世代が入りたいと思う産業で、自動車業界にしてもIT業界にしても、若い世代がどんどん入って活性化されて面白くなっていった。 だから、農業界も若い世代がもっと入りたいと思う業界であるべきだと考えています。若い子たちが新しいスパイスを加えてくることで、古くからの知識や技術や、定年退職後も継続できると言った良い文化は残しつつ、業界としてもっと伸びていく層も絶対必要なんじゃないかなと。▲GREENARIUMのチラシには「農業家を楽しむ」というメッセージも。地主さんが今後挑戦したいことは何ですか?ー美味しさの追求自分の植物生理の知識を試したいと思っています。その知識をもって、美味しいものを作るスペシャリストとして消費者の方々に感動を届けたいです。農業は規模が大きくなればなるほど、美味しさの追求が難しくなる傾向にありますが、僕は食べた人が他の人に勧めたくなるようなものを作りたい。それをやめたら終わりくらいに思っていますね。ー人材育成にも注力あとは、偉そうに聞こえるかもしれないけど、人を育て、成長させたいという想いも強いです。そのためには自分も常にレベルアップが必要ですので、日々貪欲にスキルアップに励んでいます。ー農業界が変化しても動じない、強靭な企業に農業界は今後どう変わるかわかりません。さらなる発展の可能性を秘めた業界であることは確かなので、変化し続けることに対する恐怖をなくす練習を引き続きしていきたいです。若い時に楽できる道を選んでしまうと絶対に後の人生で苦労すると考えているので、昔から迷った時は大変な道を選ぶようにしていて。これは大森さんとも共通する部分です。その苦労を経験していくことで、だんだんと苦労をポジティブに迎えられるようになってきて、人生がさらに面白くなりました。大森さんも僕もやっぱり苦しい時代はあったし、これを経験した2人だからこそ、苦労をポジティブに捉えることを大事にしようって思っていますね。これまでも、農業界は変わってきました。例えば、トマトが熊本で一斉に流行って全国に普及し、一部の生産者は経営が厳しくなってきて、最近ではイチゴへの参入が増えていますよね。そういう変化に対応するためには情報もとても大事なので、公私かかわらず人脈を広げるようにもしています。常にアンテナを張って、次の一手を常に先に考えながら動くことで、どんな変化にも耐えることのできる企業体制を整えていければなと思います。▲ワクワクが詰まった、淡路の島菜園のハウスとカフェ インタビュー日時2024年4月25日訪問先株式会社淡路の島菜園 /専務取締役 地主守 氏 /〒656-1726 兵庫県淡路市野島常盤1550−10公式ホームページ https://www.greenarium.jpInstagramhttps://www.instagram.com/greenarium_awajinosimasaien