地主守さんは兵庫県の淡路島にある「株式会社 淡路の島菜園」の専務取締役として、イチゴやトマト、メロンなどの栽培管理をしておられます。2020年からココカラのグローバッグをご使用いただき、2024年には4作目を迎えます。地主さんは農場長も務めており、「Mr.栽培オタク」と呼ばれるほど作物のことを熟知しておられます。そんな地主さんに、根域制限栽培にこだわる理由や、個人ではなく組織として農業事業を行う際に大切にしている考え方を伺いました。▲インタビューを受けてくださった地主さん。淡路島の人気スポット「GREENARIUM(グリナリウム)」とは?観光事業として「GREENARIUM」を展開しており、イチゴ狩りならぬイチゴピクニックや、レストラン、カフェも運営しています。お客さんは、イチゴ狩りをしてその場でピクニックをすることも可能。また、農園で栽培したトマトやイチゴ、メロンはGREENARIUMレストランで食べることができます。現在、従業員は40人ほどで、年間の来客数は3万5千人にのぼります。リピート客や友人を連れてきてくださるケースも多いです。▲(左)GREENARIUMのイチゴピクニック / (右)併設カフェ根域制限栽培にこだわる理由は何ですか?ー味の追求と収量コントロールが可能に根域制限栽培をすることで、味を追求できます。味は永遠の難題。だからこそ、地下部を見える化して、こだわるようになりました。あと、収量の管理もある程度できるので予測しやすい。僕たちはイチゴの観光農園としてピクニック事業をしていますが、観光農園をする上で一番クレームになりがちなのは、「イチゴがなかった」ということ。そうならないように、収量と来客数を合わせる必要があります。グローバッグで根域を制限することで収量をデータ化し、おおよその見当をつけることができます。ココカラさんのグローバッグは、経年劣化も少なく、培地容量も24Lという小さいのに3年持つので重宝していますよ。(ココカラのグローバッグについての詳細はこちら)▲GREENARIUMのイチゴとココカラのグローバッグ。ー根域制限栽培をメロンや果樹にも応用イチゴを育てた後の培地を使って、昨年からメロン栽培にも挑戦しています。基本的にメロンは地植えの作物ですが、根域制限栽培をすることで、土壌病害も防げますし、成長もコントロールできます。メロン栽培では、実にちょっとしたひび割れを作るのがポイントなのですが、それを従来のように温度管理だけでコントロールしようと思うとかなり厳しい。だから、グローバッグを使った根域制限栽培で、水を切りたいときに切ってしまえばいいんです。硬化期と言われる、実が肥大する少し前のタイミングで灌水を抑え、カラカラになるくらい乾かしてあげさえすれば、大割れを防ぐことができます。そして、肥大するタイミングで適切に水を少しずつ入れる、というコントロールをできるのが根域制限栽培なんです。自由にこちら側がコントロールできるんです。その結果、一般的にメロンの秀品率は8〜9分あれば良しとされている中で、僕たちは秀品率9割5分ぐらいにできています。しかも糖度は17度まで乗りました。植物の原理は同じなので、トマトやイチゴに限らず他の作物も根域制限栽培で自由に作れるんですよね。今年から桃やぶどうにも挑戦しています。▲GREENARIUMの“過保護”メロン。栽培は超ストイックな減点方式で行う僕は物事に対して妥協しない性格なので、栽培は減点方式です。最初に植えた時が100点満点で、例えば「あ、この天気ならあと1回灌水回数多く入れておくべきだったな」のようなちょっとした灌水ミスはマイナス0.5点みたいな。だから、減点が無いように1年間栽培にとことん向き合い続けます。さらに、例え最終的に栽培の成績がよかったとしても満足することはないんです。1年間蓄積したデータをすぐに振り返ってまとめ、次はどうすればもっと良いものを作れるのか考えます。こんな感じなので、他の社員からも栽培に対して超ストイックだと言われます。ゴールのないゴールを追い続けている感じかな。個人農家ではなく、組織で農業をするメリットは何ですか?ー組織で農業をするメリット個人の農家であれば、栽培、経理、営業など全て自分でできるようなオールラウンダーである必要があります。つまり、得意なことも苦手なことも全部自分でしなければならないので、次の一手を打つまでに時間がかかってしまう。でも、組織であれば各々の得意なことを活かせるので、利益にも繋がりやすく、次の事業への資金を作りやすい環境を整えることができます。このようなメリットがあるので、僕は組織で農業をしていきたいと思っています。よく、独立しないの?と聞かれるのですが、僕は究極の2番手でいたいとも思っています。性格上、0から1を作るより1を100にする方が得意なので、その強みをもっと活かすべきだと考えていて。あと、社長としてかしこまるのも性に合わないと思っているし、2番手なのに凄い!と思ってもらえる方が嬉しいんです。会社としても、優良な2番手がいることはとても強みになると思うので、日々ストイックに業務に向き合っています。ー個人事業から法人化する際には注意点も個人事業の生産者が法人化して規模拡大する際に、最終的に苦しむのって大体は人なんです。家族で経営していたところに赤の他人が突然入ると、そこでうまくいかないパターンが多くて。よく、生産者の方がうちに視察に来られますが、皆そこで悩んでいます。うちの会社は元々大森さんが家族で経営されていたところに僕が飛び込む形でしたが、1年目は一緒に栽培をし、2年目でいきなり経営管理を任せてもらいました。なかなか経営権を託すことって難しいと思うので、これは大森さんの心意気ですよね。僕も、任せてもらった以上はそれに答えなあかんという気持ちで、売上を伸ばしていきました。2年目で信頼して数字を任せてもらえたというのが、法人化してうまく軌道に乗る上で大きかったと思います。▲イチゴの様子を観察する地主さん。地主さんが農業ビジネスをする上で大切にしていることは何ですか?僕というか社長の大森さんもですが、この会社でビジネスをする際に大切にしている軸は「楽しいかどうか」ということです。単に儲けられるかどうかじゃなくて、みんなで楽しめるか、ワクワクできるかが鍵。楽しめることであれば、会社が存続できる事業になると考えています。あと、その想いだけでなく、数字でデータを蓄積することもずっと続けています。栽培のことも売上のことも、全部データに残します。数字は裏切らないから、そのデータを元に過去の反省をしっかりして、次の世代に落とし込むことができるんです。元々、僕が数字大好きなのもありますけど、パソコンの中は数字だらけですよ(笑)。この2つの軸を持って、今のビジネスが成り立っていると考えています。もちろん、これまで失敗もたくさんしてきました。2年目までは売上を伸ばせたものの、赤字でしたし。でも、そのデータを蓄積できたこともあり、3年目から黒字化。そこから攻めた事業ができるようになりました。生産だけでなく、GREENARIUMを立ち上げて変わったことはありますか?GREENARIUMを立ち上げて一番変わったことは採用ですね。生産だけをしていた時は、淡路島で農業しながらスローライフを送りたい、みたいな方からの応募も多かったのですが、GREENARIUMができてからは新卒を含む若い世代からの応募が増えました。BtoBtoCではなくBtoCとして直接お客さんに評価してもらえるようになりましたし、他にも雇用時期のムラを解消できました。以前は、収穫が終わった後の夏場はそんなに人手がいらなくなってしまうという課題がありましたが、農園のそばでカフェを運営すると、そこに雇用が生まれ、通年で働いてもらえますよね。淡路島を盛り上げたいという気持ちもあるので、僕たちがこうして6次化を展開していくことで、少しでも淡路島の企業誘致に繋がれば良いなとも思っています。▲生産だけでなく観光業も展開するGREENARIUMの看板。栽培にも経営にも真摯に向き合ってこられた地主さん。なぜここまでストイックに向き合うことができるのか?後編では地主さんの生い立ちやその過程で生まれた熱い想いに迫ります。インタビュー日時2024年4月25日訪問先株式会社淡路の島菜園 /専務取締役 地主守 氏 /〒656-1726 兵庫県淡路市野島常盤1550−10公式ホームページ https://www.greenarium.jpInstagramhttps://www.instagram.com/greenarium_awajinosimasaien