沖縄県ご出身の喜納 寛子さんと矢作 卓也さんが千葉県山武市で新たに農業の道を歩み始めた「Bluemate Farm(ブルーメイトファーム)」。未経験からのスタートでありながら、オーストラリアでの農業経験を活かし、ブルーベリーの隔離栽培(ポットと培地を用いた栽培方法)に取り組まれています。今回は、農園の立ち上げから栽培方法の選択、ユニークな農園名に込められた思い、そして効率化を追求する日々の工夫や未来の展望について、たっぷりとお話を伺いました。長く続けることを考えた、「ブルーベリー×ポット栽培」という選択。↑ インタビューに応じてくださった喜納 寛子さんと矢作 卓也さん。ユニークなブルーベリーの被り物を被って。喜納さん: 新規就農するにあたり、ブルーベリーを選んだのは、以前オーストラリアで農業をしていた経験が大きいですね。みかん、トマト、ぶどう、レモン、チェリー、ブロッコリー…色々やったんですけど、その中でブルーベリーが一番作業が楽だったんです。実が軽いですし、木もそこまで大きくならないので、梯子に登るような大変な作業も少ない。長く続けていくことを考えると、体への負担が少ないのは魅力でした。矢作さん:ポット栽培を選んだのもオーストラリアでの経験が影響しています。オーストラリアではこの隔離栽培が主流で、私たちも馴染みがありました。ポット栽培のメリットはいくつかあって、まず木の大きさをコントロールしやすいこと。地植えだと木がどんどん大きくなってしまいますが、ポットなら適切な大きさに保てます。それから、水や肥料の管理がしやすいのも大きな利点ですね。必要な量だけを正確に与えられますし、EC(電気伝導度)やpH(水素イオン濃度指数)の管理もしやすい。地植えだと収穫できるようになるまで5年くらいかかると言われますが、隔離栽培なら2年目か3年目くらいから収穫が期待できるので、早く経営を安定させたい私たちにとっては魅力的でした。悩んだ新規就農先は「千葉県山武市」に、決め手は手厚いサポート↑60aもの敷地に並ぶブルーベリーのポット喜納さん: 私たち二人とも農家出身じゃないんで、どこで農業を始めようか、選べたんです。最初は宮崎県や岡山県も候補として考えていました。宮崎県は日照時間が長いイメージでしたが、6月の線状降水帯が心配で、ネットによる栽培ではなくハウスが必要だと感じました。岡山県はぶどうや桃に力を入れている地域で、新規就農者にとっては農地を見つけるのが少し難しい印象でしたね。そんな中、 千葉県は新規就農者にとってサポートが手厚いと感じました。「千葉県園芸協会」という組織があって、空いている農地情報を管理していて、私たちのような新規就農者と土地の貸し手との間に入って紹介してくれるんです。担当の方が実際に一緒に土地を回ってくれて、スムーズに今の農地を見つけることができました。あと、気候もブルーベリーに適していると感じています。ブルーベリーの収穫時期である6月頃に雨が多いと実が水っぽくなったり割れたりするリスクがあるのですが、千葉はその時期の雨が比較的少ないんです。年間通しても温暖で、冬も雪が降ることはほとんどなく、マイナス気温になることも少ないので、その点も魅力でしたね。矢作さん:農園名は「Bluemate Farm」と名付けました。「ブルーベリー」の「ブルー」と、オーストラリア人が友達のことをよく「メイト(mate)」って言うんですよ。「ハロー、マイメイト!」みたいに。私たちが農園を始めたルーツがオーストラリアにあるので、その感じをちょっと入れたいなと思って。後付けみたいなところもありますけど(笑)。雑草の抑制や草取りの簡素化など、あらゆる策で効率化を追求↑雑草抑制の効果があるセンチピードグラスを育てる様子矢作さん:農園を続けていく上でも、少しでも作業を楽にするため効率化は常に考えていますね。例えば、通路には「センチピードグラス(ムカデ芝)」という芝を植える計画をしています。これが育てば、雑草の抑制効果があって、害虫も少しは避けられるらしいので、草刈りの手間がかなり減るんじゃないかと期待しています。ポットの中の草取りも、今は2週間に1回くらい、2人で2、3日、1日5時間くらいで終わらせています。培地にはココカラさんの「ブルーベリー用ココチップ」を利用していますが、雑草が生えても、培地が柔らかいのでするっと簡単に抜けるんです。ピートモスだけの培地だと固くなってしまうことがありますが、ココチップが入っていることで扱いやすくなっています。あとは、コガネムシの幼虫対策ですね。あれが根を食べちゃうと木が枯れちゃうんですが、農薬じゃなくて、天敵になる菌を使った資材を見つけて、それを使っています。人にも蜂にも影響が少ないみたいなので。↑ 「ブルーベリー用ココチップ」の培地が柔らかく、雑草もするっと抜ける喜納さん: 水やりも隔離栽培のメリットを活かして、点滴チューブで自動化しています。1つのポットに1日4回、合計でだいたい1.2リットルくらい。これで十分育ってくれています。将来的には、葉面分析とか排液分析の結果をクラウドで管理して、もっと細かく肥料の量を調整できるような、いわゆるスマート農業みたいなこともやっていきたいですね。当面の目標は、美味しいブルーベリーを安定生産すること喜納さん: 2026年春に初収穫できる予定ですが、販路に関しては、最初の1年目はそこまで収量もないと思うので、5月くらいに採れる早生の品種はJAさんに出荷しようと考えています。その時期は市場価格も一番高くなるらしいので。その後、7月とか8月に採れる品種は、自分たちでインターネット販売をしたいなと。生果だけじゃなくて、冷凍ブルーベリーも考えています。 今後の目標は、まずは安定して美味しいブルーベリーをたくさん収穫できるようにすることですね。そのために、データに基づいた栽培管理をしっかりやっていきたいです。あとは、やっぱり作業効率をもっと上げていきたいですね。草刈りが楽になるとか、そういう積み重ねで、もっと時間を有効に使いたいです。矢作さん: そして、自分たちでネット販売もするので、Bluemate Farmというブランドを少しずつ育てていきたいです。実は農園のロゴも、ChatGPTに作ってもらったんですよ(笑)。新しい技術も楽しんで取り入れながら、私たちなりのやり方でやっていければと思っています。来年(2026年)の5月末には最初の収穫ができる予定なので、今から楽しみです。インタビュー日時2025年5月8日訪問先Bluemate Farm / 喜納 寛子さん、矢作 卓也さん/千葉県山武市