群馬県で高付加価値トマトを栽培されている、蓮沼農園様。養液土耕でトマトを栽培する中、ある年に作物の6割が枯れてしまう壊滅的な土壌病害被害に見舞われました。土耕栽培の限界に直面した中で、パートナーとして共に活路を見出したのが、農業コンサルティングを手掛ける株式会社デルフィージャパン(以下デルフィー社)でした。今回の記事では、蓮沼農園の蓮沼正様とデルフィー社の田中澪様に養液土耕からココカラバッグを用いた養液栽培に切り替えるメリットをお聞きするほか、ココカラバッグCP4の灌水方法を確立されているデルフィーさんに灌水方法を解説していただきます。 特に養液土耕栽培から養液栽培へ切り替えることを検討されている方はぜひご覧ください。デルフィー社へのご相談はこちら>青枯病や水分管理が養液土耕の課題にーー農園の概要を教えてください。蓮沼さん:群馬県太田市で、主にトマトを栽培しています。食味が良いことで知られている「サンロード」という昔ながらの品種を選んでいます。規模は約34aで、主に近所のスーパーにおける地元野菜コーナーなどで直接販売を行っています。ーー以前は養液土耕栽培をされていました。どのような課題がありましたか?蓮沼さん:いくつかの課題を抱えていました。一つは病害です。青枯病という病気がすごくて、土壌消毒をきちんとしたつもりだったのですが、効きませんでした。前作では最終的に6割ぐらいダメになってしまい、残り4割しか収量が確保できない状態になってしまいました。「これじゃどうしようもない」と強い危機感を抱きました。加えて水分管理も非常に難しかったです。従来のハウスの水はけが悪く、水を与えすぎると土壌に水分が滞留し、病害の発生や実割れの原因となっていました。特に一番収量がとれるはずの夏場の暑い時期には、適切な水管理が難しく、水を絞ると玉がしわしわになったり、ヒビが入ったりする障害がありました。それに伴い、収量・品質の不安定が大きな課題でした。 収穫時期に大きな波があり、例えば連休前に爆発的に収穫があっても、最も需要が高まる連休中に収穫がないといった状況でした。また、トマトの品質にもバラつきがあり、B品が多く発生していました。↑ 養液土耕の様子ーーその解決策を相談したのが農業コンサルティングのデルフィーさんだったんですね。蓮沼さん:10年以上前から隔離栽培には興味を持っていて、関連する勉強会にも参加していましたが、ハードルの高さから導入には至っていませんでした。病害問題に直面し、これ以上同じ失敗を繰り返したくないという強い危機感がありましたが、私自身に隔離栽培に関する知識が不足していることは自覚していたので、専門家であるデルフィーさんにお願いしました。担当コンサルタントの田中さんは言い訳がきかず、厳しいながらも的確なアドバイスをしてくださるので非常に価値を感じています。ーーデルフィーの田中さんから見て、蓮沼農園さんの栽培状況はどのように分析されていましたか?田中さん:もともと収量の山谷があったので、収量の山と谷の差を小さくすることが重要だと考えました。また、サンロードという品種はどうしても鬼花が咲きやすいんです。そしたら思ったよりも果実が大きくなって、着果負担がかかりすぎちゃうんですね。最初に収量の山が作られて、その後の収量が少なくなっていくわけです。茎が細くなってしまうと、そこから回復するのが難しかったかと思います。なので、最初は茎を強くしすぎないということが重要なスタートになります。↑ 栽培コンサルタントの田中さん(写真左)課題解決としての隔離栽培への転換ーー課題を解決するため隔離栽培への転換を提案されましたが、どのようなメリットがあるとお考えですか?田中さん:隔離栽培はデータが見える化しやすいのが特徴です。環境センサーや排水センサーの導入により、客観的なデータに基づいて緻密な栽培管理が可能になります。水や肥料の管理がより精密になることで、さらなる収量アップと品質向上も見込めます。これまで日射が多く収穫量が多いはずの時期に収量が落ちてしまう状況もありましたが、収量の山・谷を減らして安定供給が目指せます。また、栽培の再現性が上がると思います。以前の収量は17-18トンだったかと思いますが、25トンを目指せると思います。もしかしたら収量は25トンじゃなくて、もうちょっといけるかもしれません。これまで必要だった土壌消毒が必要ないので、その分栽培期間も長くすることができ、収量は上がりますよね。ーーデルフィーさんからどのような提案をされたんでしょうか。田中さん:土壌病害対策として、ココピートを用いた隔離栽培に切り替えを提案しました。培地を効率的に配置し、作業性を高めるための高設ベンチを導入し、特にハウスの谷下部分にも培地を置ける効率的な設計のベンチをおすすめしました。データに基づいた栽培管理を行うため、温度、日射量、CO2濃度、湿度を正確に測定できる環境測定器「プロファインダー」をハウス中央への設置。培地からの排水タイミングを温度変化で検知する排水確認センサー「プロトラッカー」をプロファインダーと連携させ、排水状況をリアルタイムで把握し、灌水管理の精度を高められるようにしました。さらに日射比例かん水装置「かけるくん」を導入したほか、肥料タンクを増設し、肥料の安定供給と緻密な配合調整をできるようにしました。ココカラさんの培地は均一なので、かん水管理もしやすく、正確なデータがとりやすいです。培地が不均一だと、灌水管理が難しく、場所によってデータがことなる可能性があります。↑ 環境測定器「プロファインダー」と日射比例かん水装置「かけるくん」↑ココカラバッグCP4栽培の肝となるかん水管理ーー具体的にどのようにかん水管理を推奨されていますか?最初にかん水量の考え方を教えてください。田中さん:まず1回あたりのかん水量を決めます。これは、培地の中の水の広がりを決めています。蓮沼さんの場合、1回あたりのかん水量は培地容量に対して3%で設定しています。これが、培地容量に対して1回あたりのかん水量が多ければ、養液は培地内で広がらず下に落ちてしまい、1回あたりのかん水量が少なければ、養液は満遍なく広がりません。その結果、植物がうまく吸水できません。つまり、1回あたりのかん水量は植物が効率よく吸水できる数値になるように決めています。ハウス内環境をずれなく把握するため、単位はすべて10aあたりで揃えます。かん水量の基準値としてLAI3(LAI=葉面積指数)のとき、1MJあたり250L/10aと考えています。これは植物が蒸散する量から算出しています。つまり、夏の収穫期の葉面積の時、日射が1MJあるとすると、10aあたり250L/10aかん水を与えるということです。ーー続いて、かん水管理のポイントを教えてください。田中さん:■初期管理(定植〜活着)まず、定植したら1回かん水してください。培地容量の3%が1回の灌水量の目安になります。バッグの数やドリッパーの数で1回の灌水量を決めます。蓮沼さんの場合は、1回あたりのかん水量は10aあたり330Lです。乾きすぎだなと感じたら、もう1回かん水してください。1回あたりのかん水量は同じです。1回かん水して、その日は終わりです。そこから5日から1週間で必ず活着させることが目標です。活着させるためのかん水のポイントは、水を多くやりすぎないということです。基本1日1回にしてください。もし乾くなら2、3回はやってもらいたいんですが、必ず昼までには終わらせるようにしてください。■開花期ごとのかん水管理第1花房開花の時には、葉面積が増えるごとにかん水を増やしますが、晴れたら2回で、曇ったら1回という感じです。初期管理と同じで乾く場合は、回数を増やしてください。房が開花したら、晴れたら4回。曇ったら2回です。第3花房開花で、晴れたら6回、曇ったら3回が基準です。第3花房開花までは着果負担が少なく樹勢が強くなりやすいです。そのため、かん水を多く与えすぎないようにして樹勢を落ち着かせる管理をします。■日射比例かん水第4花房開花からは着果負担もかかり樹勢も落ち着いてくるので、植物が必要とするかん水量を与えます。そのため、日射比例かん水に切り替えます。日射に対するかん水量は調整して決めています。どんな時に変わるかというと、大きく言うと冬と夏で変わります。冬は日射が少なく、湿度が高いので、10aあたり250L。夏場は日射が多く、乾燥してるので蒸散量が多いです。なので、だいたい10aあたり300Lです。かん水の開始時間は固定で入れてもらった方がやりやすいと思います。かん水の調整はあくまでも終了時間で調整する方がやりやすいと思います。■排水管理と根の状態確認夜間に根が痛まないようにするためには、培地の中の水分量を10%ほど下げたいです。 翌日までに培地の水分量が10%下がるように、かん水の終了時間を調整してください。蓮沼さんの場合は、1回あたりのかん水量を培地容量の3%で設定しているので、培地の水分量10%分が満たされるのは、かん水3回目、もしくは4回目となります。つまり、3回目のかん水でちょろちょろっと出て、4回目にはしっかり排液が出ているかが確認できれば、前日はしっかり培地水分量を10%程度下げられたことがわかります。今まではこれを目視で確認していましたが、排水確認センサーの「プロトラッカー」があるとグラフを見ればすぐわかります。後は、バッグの横を切っていただいて根の状態を1週間に1回見ていただきたいですね。↑排水を確認できるプロトラッカー隔離栽培への転換で、安定栽培・収量アップも期待ーー最後に今回の隔離栽培への転換に対する期待をお聞かせください。蓮沼さん:これ以上失敗したくない、という選択肢で以前から興味のあった隔離栽培に転換しました。土耕で水はけが悪いと、水が残って病気になったり、実が割れたり、茎が余計に成長したりという課題がありました。隔離栽培に転換することで必要な分だけ水をあげて、肥料や温度管理を行っていくことで、安定的に栽培するとともに、収量アップも期待しています。ーー本日はお時間をいただき、ありがとうございました。隔離栽培へのお切り替えは、ぜひご相談くださいデルフィー社は、ココカラバッグCP4を用いた隔離栽培のかん水方法を確立しています。今回の記事では蓮沼農園さんに合ったかん水方法をご紹介していますが、最適なかん水方法は培地量、ドリップ数、気候、さらに、植物体の状況によって異なります。ご自身のハウスや植物で最適なかん水管理を行うことで目標達成に近づくことができます。新しいことにチャレンジするときは不安もあると思います。しかし、知識があればチャレンジしやすいです。養液土耕栽培から養液栽培へ切り替えることを検討されている方は、ぜひ一度株式会社デルフィージャパンにご相談ください。■コンサルディングのお問い合わせ先株式会社デルフィージャパンお問い合わせ:https://delphyj.co.jp/contact/電話番号:0285-38-7290 (受付時間 8:30-17:00<平日のみ>)