生産者名:株式会社 淡路の島菜園生産地 :兵庫県 淡路市 栽培作物:イチゴ、トマト、メロン、桃、ブドウ 導入製品:ココカラバッグCP2兵庫県淡路島にある「株式会社 淡路の島菜園」では、2020年からココカラのグローバッグをご使用いただきイチゴやトマトの栽培管理をされてます。2023年からは新たにメロン、桃、ブドウも栽培開始。それらの栽培には、使い終わったココピートを再利用することで、効率的かつ持続可能な農業に取り組んでいます。今回は、専務取締役で農場長も務める地主守さんに、ココピートを再利用したブドウ栽培のノウハウやそのメリット、そして今後の展望について伺いました。ーーどのように根域制限でブドウを栽培していますか?ポットはルートラットポットという、防根透水シートでできているものを使っています。容量は200Lです。ポットの中身は、下にはイチゴの栽培時に使用していたココカラのココピートを入れていて、その上に除草シートを敷き、さらに上には木チップを除草のために入れています。今はポットに対して8割程度しか培地を入れてないんですが、ブドウの根域が多いのでもっとココピートを入れてもよかったなと思ってます。ココピートは、3年間イチゴを栽培した後の使い終わったココピートを再利用しています。▲ルートラットポットに再利用ココピートを入れ、その上に防草シート、木チップをのせている。ーーココピートの再利用でも栽培はできますか?ある程度保水した方が良いので、逆にちょうど良いと思っています。ココピートって、使用していくと段々とココピート粒が分解されて排水性が下がり保水性が上がると思うんですけど、 最初はココピートが古いと水を持ちすぎちゃうんじゃないかとも考えました。ですが、培土量自体が少ないというのもあり、pFメーターで管理してみると案外数値は上がっていくんです。だから水を持つといっても、それなりに乾いているだろうなって思うんですよね。正直、土は何でも良いと思うんです。重要なのは、自分たちの灌水能力。正しく灌水と肥料を与えられるかどうかが植物の生育に大きな影響を与えます。元々ブドウを根域制限で栽培している人も少ないんですけど、一般的にはバーク堆肥とかいろんな堆肥系を組み合わせて、順番にポットに入れていったりするんです。でも、どうせ液肥のドリップ灌水で栽培するなら、もう今までのイチゴやトマトのような感覚で、ココピートでいいんじゃない?と思い、ココピートを使用することにしました。これまで使い終わったココピートは畑にすき込んだりしましたが、果樹栽培に再利用できるのは良いですよね。ーーなぜブドウを栽培しようと思ったのでしょうか?イチゴが収穫できない夏の時期でもブドウなら収穫できるというのが一番の理由です。うちでは、年間5万パックのイチゴを自社直売所で販売していますが、そういったファンでいてくれる方々に何も出荷できない時期があるのは、お互いwin-winではないなと思うんです。なので、イチゴの裏作となる作物としてブドウを始めました。また、うちではレストランやカフェも展開しているので、夏の時期のメニューとしてもお客様に楽しんでいただくことができます。あとはコストですね。例えばうちみたいに、淡路島で空きハウスがあるパターンって、そこで イチゴを新たに作ろうとすると1反あたり1000万ぐらいの投資がなんだかんだで必要なんですよ。ハウスを建てるとなればもっとかかりますよね。うちがこれから1000万をイチゴに投資するかって言われると、結構リスクだなっていうところもあって。というのも、今、兵庫県全体で見るとイチゴの栽培がとても増えているんです。昔、トマトの栽培が流行ってどんどん増えたような感じです。それも踏まえて次は何を栽培したら良いかって考えて、根域制限栽培でブドウをしようという結論にいたりました。根域制限栽培というのもポイントです。▲(右)淡路の島菜園で手がけたブドウと(左)そのブドウを作ったクレープーー根域制限栽培にこだわる理由はなんですか?・根域制限栽培は狙った灌水コントロールが可能。根域を制限した場合、樹形の長さは最長で4mほどなので、たった1年で樹形を完成させることができるんです。なので、2年目から普通の大きさの果実が獲れます。その後も徐々に収量が増え、4年目には最大量を狙うイメージです。一方で地植えの場合、根域が大きくなる分、樹形も大きくなるんですが、それには4年ぐらいかかると言われています。なので収穫までに時間がかかってしまうんです。根域制限栽培の良さって、灌水を自動で打てることなんですよね。このブドウは本当にトマトを作ってる感覚で、蒸散量に合わせてどんどん灌水しています。1日で60Lとか水を入れています。本当はブドウもそれくらい灌水が必要なんですよ。 地植えで根域のように蒸散に合わせてたくさん灌水しようと思うと、地面との相性の問題が出てきたりするので、なかなか難しいんです。・栽培コストも抑えることができる。尚且つ、ブドウの根域制限栽培は初期投資額が非常に安いです。ハウスだから単管棚で樹を支える必要はなく、ワイヤーをはるだけでいけます。あと、果樹に被せる袋もいらないですね。雨の心配がないので、病気リスクもかなり低いです。さらに言うと、手をかける時間数も少ないです。ブドウの場合4月〜6月に1反あたり400時間とかで済むんです。でもイチゴの場合は、大体うちで1作あたり1700時間ぐらいかかります。ブドウはイチゴの4分の1以下の時間で栽培できちゃうんですよね。会計士さんからも教えてもらいましたが、会計士は各作物の決算書を把握しているので、儲けてる人、儲けてない人ではなくて、品目として強い弱いが結構わかるそうです。ブドウは儲かるって前から言われ続けてきたものの、やってなかったんですが、実際に栽培してみたら確かにそうかもなって思いました。だから、新規農業参入でブドウだけを作るとなるとリスクはありますが、次の一手としてブドウを持っておくと いうのはアリなんだろうなと思いますし、間違いなく面白いですよ。使い終わったココピートの再利用もできますし。▲淡路の島菜園のブドウハウス。単管棚ではなくワイヤーで樹を支えている。ーー改善点や今後の展望があれば教えてください。・品種の選定や、よりコストを抑える方法も検討中。このブドウは今年2年目の苗木なんですけど、35本から700房ほど獲れました。 品種も色々試しで植えてるので、この品種いいなとか、この品種はダメだわみたいなのも今作でチェックしていました。ブドウはイチゴと違って、どんどん新しい品種が出ているので、とにかく沢山試してみる必要があります。そうなった時に、根域制限栽培の方式だったら全然何十本って植えることができるから、品種変えもしやすいです。来年は15品種ぐらい狙っています。ちなみに、ポット間のピッチは3mで作っていたんですけど、試験的に今年栽培してみて、4mあけて良いなとも思いました。ココピートの場合、ある程度草は生えてきてしまうので、今後どう草を防ぐかも思案中です。上からシートをかぶせて、チューブ自体をちょっと違うものにしてしまおうかなとも思っています。ポットの容量は200Lと言いましたけど、拡大する際は150Lでいいかなとも思いました。ポットに対して培地をどれだけ入れるかという話なので、 ポット自体の容量は150Lにして、入れる培地量を多くしてみようかなと考えています。もっと深いポットの方が良いのか?とかまだ分からないこともあります。・ブドウの作付け面積を増やして、憩いの場を新たに作りたい。ブドウのハウスは今4反あるので、今後はこのルートラットポットを500個くらい置くまで拡大しようと思っています。あとはグリナリウムというレストラン施設の斜面地にもブドウを置こうかなと考えています。レストランの前の斜面になってるところに、ハウスを建てるのではなくウッドデッキのようなベンチを組んで。というのも、夏の猛暑でもブドウの樹の下ってとても涼しいんですよ。あと、人って植物の中で1番幸せを感じるわけじゃないですか。なので、ブドウの屋根の下で人が休憩できるスペースを作ったりできるといいなって。山梨エリアなんかでやると、もう二番煎じかもしれないですが、関西エリアはまだまだこれからだと思っています。▲トマトやイチゴのハウスに併設しているレストラン「GREENARIUM(グリナリウム)」