目次農林業から発生する未利用資源の有効活用は、持続可能性のための重要な課題です。これまでは廃棄物として扱われていたモノが、少しの工夫で資源として新たな価値を生み出しています。もみ殻から抽出されるシリカやトマトの茎葉残さ、バーク材という3つの未利用資源に注目し、その可能性と課題を示します。農林業の未利用資源とは畜産分野や農業分野から排出される未利用資源には、家畜排泄物や畜産副産物などのふん尿、食品残さ、農場から出る残さなどの副産物、木質系資源などがあります。これらの利用方法は、飼料化や堆肥化などのマテリアルとしての利用と、バイオガスや発電などのエネルギーとしての利用がされます。シリカの活用事例シリカは植物に含まれる成分です。特にもみ殻は15〜20%という高いシリカ含有量を示します。これまでもみ殻は主に土壌改良材や堆肥、畜産敷料として利用されてきましたが、約2割が未利用のまま廃棄されているのが現状です。しかし最近では、クエン酸を用いたキレート反応によって、カリウムやナトリウムなどの不純物を除去し、高純度で非晶質、安全性の高いシリカを抽出することが可能になり、もみ殻由来のシリカの産業利用が期待されるようになりました。シリカの活用は、建設資材分野では、高機能セメントの混和材として利用されています。農業分野においては、シリカ肥料として地産地消型の資源循環が実現できる可能性があります。さらに、電子産業での半導体の封止材や、化粧品原料、自動車タイヤの補強材、塗料の添加剤としても使用されています。トマトの茎葉残さの活用事例施設園芸におけるトマトの茎葉残さの処理も長年の課題です。トマトの茎葉を活用した事例として、エタノール生産や、繊維を樹脂と混ぜ合わせた強化プラスチックの製造が試験的に行われています。さらに、植物由来のセルロースナノファイバーの製造技術も開発され、自動車部品の軽量化や食品、化粧品への応用が検討されています。トマト茎葉の全量利用法に関する研究では、トマトの茎葉から抽出した搾汁液に強い抗菌効果があることが確認されました。様々なトマト品種の中でも、「高リコピン」品種は炭そ病菌に対して特に効果を示し、また全品種において灰色カビ病菌に対する強い抗菌性が認められています。この発見は、農薬使用量の削減につながる可能性を秘めています。また、北海道のAgReturn社は、乾燥粉砕したトマト茎葉と針葉樹パルプを原料とした「土にかえる容器」や、トマトのわき芽を活用した「トマト和紙」も製造しており、北海道の和紙工房とコラボレーションしながら、名刺サイズの特殊和紙として展開するなど活用されています。バーク材の活用林業残さではバーク材の活用にも注目されています。バーク(樹皮)材とはバークとは、主に製材時に剥ぎ取られる赤松や黒松などの樹皮です。バーク材は主に二つの過程で発生します。一つは木材工場での製材過程で生じる工場残さとして、もう一つは、林業残さとして森林での伐採や間伐作業の際に発生する枝葉や樹皮がこれにあたります。かつては産業廃棄物として処理されることが一般的でしたが、1960年代後半から堆肥化など、有効活用への取り組みが始まりました。特に日本では、1965年頃からバーク堆肥の工場生産が開始され、野菜栽培用の資材として利用が拡大していきました。バーク材の活用バークは、堆肥や家畜の敷料、ボイラー燃料など、様々な用途で活用されています。堆肥バーク堆肥は、バーク材に牛ふん等や食品残さを混ぜて堆肥化したものです。畜産の敷材樹皮を高温で炭化することで作られたバーク炭は、高い吸着性を持つことが特徴です。破片状で加工しやすく、特に畜産分野では臭気対策として活用されています。乳牛舎での使用例では、排泄ふん量比3%以上のバーク炭を敷料に混合することで、臭気の低減効果が確認されています。エネルギーバーク材はバイオマス燃料としての活用も進められており、地域によっては熱利用や発電に活用されています。ただし、バーク材には対応できないボイラーも多く、設備や技術面での課題があります。日本におけるバーク材の現状と課題バーク材利用の課題として、バークを含む木くずの燃焼により高濃度の放射性物質を含む灰が生成される事例が報告されたことから、その利用が停滞していました。そのため、林野庁は製材工場等から発生するバークの適切な処理を促進し、その結果、バークの滞留量は2013年8月には8.4万トンあったものが、2023年11月には約2,000トンまで大幅に減少しています。それでも一定程度の滞留が見られます。このような状況を踏まえると、バーク材の今後の利用に向けては、処理方法の適正化、新規用途の開発、安全性の確保という三つの課題に取り組むことが必要です。未利用資源の活用でサステナブルな未来へかつては廃棄物として扱われていたシリカ、トマト残さ、バーク材などの未利用資源は、環境負荷の低減と資源の有効活用のために取り組みが進められています。こうした未利用資源の活用は、環境負荷の低減だけでなく、新たな産業の創出や地域経済の活性化にもつながる可能性があります。また、ココピートももともとは未利用資源だったヤシガラをアップサイクルする目的で生まれた培地です。今後は、使用済みココピートを含めた農業残さなどの新たな未利用資源の活用に向けた取り組みが期待されます。参考文献未利用資源|ルーラル電子図書館木質バイオマス燃料について「工学との連携による農林水産物由来の物質を用いた高機能性素材等の開発」研究戦略~異分野融合研究~課題名:トマト茎葉の全量利用法に関する研究木材需給・利用と木材産業AgReturn