<目次>この記事では、イチゴ栽培における設備や培地の比較を交えながら、高設栽培×ココピートのメリットや作業のポイントをご紹介します。 イチゴ栽培における土耕栽培と高設栽培の違い イチゴの栽培は、土で育てる「土耕栽培」と、栽培ベンチで栽培容器を作業しやすい高さに上げる「高設栽培」。この2つの栽培方法があります。 土耕栽培のメリット地域ごとの土壌特性を活用できるため、栽培初心者の方でも地力(ちりょく)で作物を育てることができます。また、一定以上の味や収穫量の確保ができることが多いため、総じて栽培しやすいと言えます。 さらに、高設栽培と比べ初期投資がかからないことや、消費者がもつ「土で栽培する=良品質のもの」というイメージによって販売価格を上げやすいこともメリットだと言えます。そのため、新規就農者でも始めやすい栽培方法です。 土耕栽培のデメリット一方、土耕栽培にはデメリットもあります。気温や地温が高い猛暑の場合、灌水した水が熱くなってしまい、お湯をかけたような状態になってしまいます。その熱で、植物の根を痛めてしまう恐れもあります。 また、培地量の少ない高設栽培と比べると、最小限で最適な灌水や施肥が難しく、灌水のムラ、ひいては生育のムラになりやすいのもデメリットでしょう。 高設栽培のメリット高設栽培のメリットとして、作業のしやすさがあります。作業者の腰あたりに高設ベンチがあるため、楽な体勢で作業ができ、作業者の体への負担が軽減されます。 また、土耕と比較して培地量が少なく、データを構築し管理できるため、適切な灌水や施肥が可能です。 それだけでなく、地面から遠い位置に培地があるため、地温が上がった場合でも培地の温度管理が可能というメリットもあります。 高設栽培のデメリット一方、高設栽培の場合はベンチや培地等の初期投資が必要です。しかし、その後、猛暑などの予期せぬ気温上昇が起こった場合にも、データ管理をしながら比較的安定的に栽培、収穫ができることを考えると、その初期投資も高いものでもないかもしれません。 イチゴの高設栽培では培地は硬くても、柔らかくてもダメ!?では、イチゴの高設栽培にはどのような硬さの培地が適しているのでしょうか。 培地がかちかちの状態だと水が培地に浸透しないので、植物の根は水を吸えません。(図1) 培地が空気を含んだふかふかの状態の場合は、灌水時に水がすっと下に落ち、培地の下部に溜まります。灌水チューブは培地の真ん中に挿すのに対し、イチゴの苗は培地の真ん中より少し離れたところにあります。そのため、あまりにも水が速く下に落ちてしまうと、水と上部の根の接触が少なくなり、上部の根が張りにくくなります。(図1) イチゴ栽培のための培地の適正な固さは、培地を手などで上から押さえて、ある程度硬さのある状態です。培地を程よい硬さにすると、上から注いだ水がゆっくり培地内を下に移動するだけでなく、横へも浸透していきます。(図1) 灌水チューブから少し離れた場所にある苗に水や肥料がしっかりと行き渡り、根がそれらを吸収できるようにするためにも、特にこの水の横浸透が重要です。 そのため、培地はほどよい硬さが必要です。ふわふわしている場合は手でしっかり押さえてから使用しましょう。 イチゴの高設栽培の培地はココピート?混合培地?次に、高設栽培で使う培地にはどのようなものがあるのかご紹介します。 一般的に高設栽培の場合は、「ココピート」か「ピートモスの混合培地」を使用します。 高設栽培の培地に「土」は不向きです。これは、土の重量が高設ベンチの耐荷重を超えてしまうためです。 では、ココピートとピートモスの混合培地のどちらがイチゴの高設栽培に適しているのでしょうか。 ココピートは灌水した水や肥料が横浸透しやすいので、下根だけでなく上根も張ります。(図2) ココピートの培地内で水や肥料が横浸透しやすい理由は大きく2つ、①ココピート自体に水を保有できる穴がある②ココピート自体が水と結合しやすい特性を持っているためです。一方でピートモスは、培地全体で水分を持ちすぎてしまう性質から、排水性をよくするために土やパーライトを加えた混合培地として使用します。しかし、今度は培地内に隙間ができてしまい、水が下に落ちやすくなってしまいます。そのため、ピートモスの混合培地は、水や肥料を灌水チューブから与えても横浸透しにくいため、上根が張りにくい状態になります。(図2)これらのことから、イチゴの高設栽培にはココピートがおすすめです。 イチゴの高設栽培でココピートを使うポイントは? 最後に、イチゴの高設栽培にココピートを使う場合に気を付けることを解説します。 培地を手で押さえるまずは、灌水後に横浸透させるために培地を適切な硬さにすることです。そのため、ほぐれた状態のブリケットやLCBを使用する場合には、必ず手で上から押さえてください。 その作業を削減したい場合には、スラブの使用がおすすめです。スラブは固形培地に水をかけて膨らませるため、空気が入っておらず、手で押さえてふわふわな土を固めるという手間がかかりません。 また、グローバッグも同様に押さえる手間は不要です。さらに、グローバックの場合は培地の容量が小さく、浅くなるので栽培管理がしやすくなります。 メリットとデメリットを知って培地量を決めるイチゴの栽培で、一般的に高設ベッドの深さは20cm程度ですが、培地の容量は24〜30Lほどあれば十分です。40Lも必要はありません。 培地の容量が大きい、つまり深いと、培地に対して根の割合が少ない状態です。そのため、普段は根に吸われない水や肥料などの「貯金」が使えます。つまり、ある程度のバッファーがある状態ですので、環境影響に対して栽培上の障害が起こりにくいというメリットがあります。一方で、培地量が多い分、水や肥料の使用量が増え、コストが増えるといったデメリットもあります。 一方、24L等の容量が小さく、培地の浅い培地では、根が水や肥料を吸収しやすく、管理や栽培がしやすいという特徴があります。その結果、栽培のムラが少なくなります。(図3) 定植した苗のすべてが同じように生育するのは難しいですが、収穫量の増加や品質や作業性の向上のためにも可能な限り均一に栽培する必要があります。そのためのソリューションの一つとして、培地量が小さいため、水と肥料を根に届けやすく、データでの管理が可能なココカラバッグやスラブを提案します。