<目次>気候変動による気温上昇や気候パターンの変化によって、世界各国では『乾燥』が深刻な問題となっています。現在、陸地の4割以上が乾燥地域と言われていますが、この先その面積は増える可能性があります。日本も例に漏れず、乾燥による農作物への影響は喫緊の課題となっています。では具体的に、『乾燥』が農作物にどのような影響を与えるのか。そして、これからどのような対策ができるのか、今回はこの『乾燥』に着目して考えていきましょう。乾燥による作物への影響は?高温、集中豪雨、干ばつなどの気候変動によって、70品目以上の農作物が品質や収穫量に影響を受けると言われています。例えば、コメの白未熟粒や胴割粒の発生、ブドウの着色不良や遅延、ナシの発芽不足、トマトの裂果、ミカンの浮き皮など、すでに多くの作物で被害が出ています。また、果樹はいったん植えたら長期間にわたり栽培が続くため、農作物の中でも特に影響を受けやすい、と言われています。ほかにも、ミネラル類は水に溶けて土壌中を移動するため、土壌中が乾燥してしまうと、移動しにくくなります。そうなると、ミネラルなどの微量要素を植物が吸収しにくくなるといったことも起こります。微量要素が不足すると、トマトの尻腐れ病やレタスのチップバーンなどの原因にもなり得ます。そのため、いかに土壌中に水を維持させるかが乾燥対策のポイントになります。どのような乾燥対策がある?では、どのような乾燥対策を取ればいいのでしょうか。1.灌水(かんすい)まずは、物理的に灌水チューブやスプリンクラー、点滴チューブなどを設置し、水を補う方法が考えられます。ただ、露路栽培などの広大な農地や、果樹の傾斜地などでは一定量の水を送ることは難しく、コストも嵩んでしまいます。さらに、地域の条件に左右されますので、そもそも地理的に灌水が難しい場合もあります。2.乾燥耐性品種の利用次に、乾燥耐性品種を利用する手もあります。コメについては高温耐性や乾燥耐性の品種の育成等が積極的に進められています。ただし作物によっては対応する品種が不十分であったり、品種の育成、普及までに時間がかかったりする可能性があります。3.乾燥耐性バイオスティミュラントの活用乾燥耐性のバイオスティミュラントを利用することもできますが、こちらも開発が進められている段階で、選択可能な製品はまだあまり多くありません。4.土壌改良材で保水性を維持する今日から取り組みできる方法として、土壌改良材の活用が挙げられます。土壌改良材によって土壌中の保水性と排水性のバランスを保ち、土壌表面に置くことで乾燥を多少なりとも防ぐことが可能になります。ココピートを土壌改良材として利用するメリットココピートも土壌改良材として利用できます。ココピートには保水性、通気性、土壌の団粒構造を改善する特性がありますが、これを土壌改良材として使用するメリットはどのような点にあるのでしょうか。1.水分保持ココピートは優れた保水能力を持っています。そのため、土壌を湿った状態に保ち、土壌の急速な乾燥を防ぎます。2.排水性保水性がある反面、ココピートには排水を促進する効果もあります。例えば、集中豪雨の時期に、果樹の根が浸水して害を及ぼすことへの予防にもなります。3.通気性繊維構造によって、空気が根に届くので、健康な根の成長を促進します。また、固い土壌の構造を改善でき、根の浸透を良くします。果樹栽培では実際に、根を広げていくために木の根元にココピートを置く農家もあります。4.微量要素の利用可能性ココピートにはわずかながら、カリウム、リン、微量栄養素などの必須栄養素が含まれています。ココピートは分解が比較的ゆっくりで、これらの栄養素は分解されるにつれて徐々に土壌中に放出され、緩効性肥料効果が期待できます。ココピートの土壌改良材利用時の注意点ココピートの土壌改良材としての利用にはさまざまなメリットがありますが、気を付ける点もあります。それは、窒素成分の不足です。未使用のココピートをそのまま入れることは可能ですが、ココピートの特性上、Cが多く、炭素率(C/N比)が高くなる傾向にあります。それによって土壌中の窒素が不足してしまうため、窒素成分を多めに施用することが望ましいです。その理由は、有機物を土壌に入れると微生物により分解されることにあります。微生物によって団粒構造が作られ土壌の物理性が改善し、土壌微生物が活性化するなどの利点があります。一方、ココピートの場合、有機物を分解する過程で、微生物の栄養に窒素成分が使われるため窒素飢餓になりがちです。ただし、窒素過多の土壌については、窒素を微生物が利用するためココピートを入れることで土壌中が最適な化学性になるともいえます。そのため、ココピートを土壌改良材として利用する場合には、まずは土壌分析を実施しましょう。その上で、窒素成分を追加で施用するか否かを決めることが重要です。参考47news『地球温暖化、農作物70品目に深刻なダメージ 品質低下や収穫量減少 コメ、野菜、果物、豆類…食卓が脅かされる』(2022/8/23)https://nordot.app/929312614628786176?c=39546741839462401