<目次>コロナを経て、地球環境負荷やサステナビリティを意識した農業への関心が高まっています。100%天然素材であり、使用後も環境負荷なく土に還っていくココピート(ヤシガラ培土)は、その注目素材のひとつとなっています。しかし、日本の農業においてはまだ歴史の浅いココピート。その知識と経験不足から、品質をめぐるトラブルが生じているのも事実です。そこで本日は、「なぜココピートは品質に差があると言われているのか?」ココピートの品質に影響を与える原因を明らかにし、その上で、ココカラ製品がどのように解決しているのかご説明できればと思います。品質の原因は原産国・輸入側双方にあり?ココピートごとに品質の違いを生むのは、基本的に知識不足と生産管理の問題です。そして、品質に影響を与える原因は、原産国、輸入側(買い手側)どちらにもあります。 <原産国の課題>・正しい品質管理に対する知識不足・日本品質に対する認識不足・品質と値段の違いについての説明不足 <輸入側(買い手側)の課題>・品質の違いの理由、品質のコストが比例していることへの理解不足・生産・品質管理を現地に任せきりになっているでは、ココピート全体の品質に差が出てしまう品質管理のポイントはどこでしょうか?品質管理をする上で差が出るポイントとは?ここでは品質管理をする上でバラつきが出るポイントを3つご紹介します。● EC値の管理不足● 含有水分の管理不足● 品質基準が定まっていないEC値の管理不足EC(電気伝導度)は、主に土壌中の残留養分や塩分濃度を知るための指標濃度指標です。天然素材のココピートには、様々な養分要素が含まれていていますが、それぞれの含有量を計測することはできません。安定した作物の栽培のためには、EC値を下げる必要があります。(原因)サプライヤーが、EC値の高いココピート粒と低いココピート粒を混ぜることで、見せかけのEC値(平均値)を下げている。(影響)・ロットや製品ごとにEC値のばらつきがでる。・見せかけのEC値は下げていても、実際にはEC値の高いココピート粒が入ったままになっている。Q.なぜEC値はバラバラなの?ココピートのEC値は、原料となるココナッツの木が生育する土壌や、周辺環境に大きく影響を受けます。例えば、インドのケララ州やスリランカの海沿いの土壌はナトリウム(Na)を多く含んでいる傾向があります。一方、インドのポラチの土壌はカリウム(K)が多く含まれています。インドのバンガロール近郊やインドネシアでは、ココナッツをバイオマスに利用することが多いため、茶色く熟成してからココナッツを収穫します。熟成して茶色くなったココナッツには粒の小さなココピートが多く含まれ、その結果ココピート粒のEC値が高くなります。 EC値が高いと、EC値を下げるための水洗浄の回数を増やす必要があります。また、ココナッツ農園の近くに工場がある場合、工場から出る灰や水の影響で、ココナッツに有害物資が入る可能性があります。このように、原料となるココナッツの産地によって、土壌や地下水の性質が異なるため、天然のココナッツのEC値にばらつきがでるのです。Q.ココカラはどうやってEC値を管理しているの?ココカラでは、サプライヤーとなるココナッツ農園の土壌と地下水に含まれる成分・養分を確認した上で取引の契約をかわし、産地の特徴に合わせたココナッツの管理を行っています。例えば、カリウムは、含有量が多い分には問題ありませんが、少ない場合は、カリウムの代わりに何が含まれているのかを確認し、含有する成分によって、水洗浄の回数を調整しています。もし、ナトリウム(Na)が多く含まれている場合には、通常1回の洗浄を3回おこないます。その際、洗浄に使う水のEC値管理も行っています。契約後も定期的に土と水の検査をし、周辺地域で土壌に影響を与えるような問題が起きていないか確認を行っています。また、水洗浄はココナッツの産地別に行い、ロットや製品ごとのEC値のばらつきがでないように管理をし、各製品の中に異なる産地のココピートを混在させないことを徹底しています。 ※ ECの値を下げただけでは、ココピート粒に含まれている成分・養分の内訳は分からないため、ココカラでは使用前の硝酸カルシウムによるバッファリングをおすすめしています。含有水分の管理不足ココピートは含有する水分量が多いと、使用する際に膨張しにくくなります。また、含有水分の管理は、原料(加工前)だけではなく、圧縮された状態(グローバッグやスラブなど)でも行う必要があります。(原因)① 原料での含有水分率チェックのみで、圧縮した状態でのチェックをしていない。② 実量と含有水分率の関係性を考えていない。 (影響)① 最終製品の含有水分率が高くなっていることに気づかない。② 1キロあたりの容量しか見ていないので、含有水分によるココピートの実量に差がでる。(例:湿度の高い日に製造すると水分量が増え、ココピートの実量は減る) Q. ココカラはどうやって含有水分率管理をしているの?ココカラでは、原料の状態と、製品の段階で含有水分率検査して管理しています。ココピートは圧縮すると測定湿度が高くなり、最終製品の含有水分率が上がります。ココカラでは、原材料の水分率を15〜18%に、製品では20〜25%になるように管理しており、25%を超えるものは破棄しています。また、提携工場ではココピート1キロあたりの生産量を確認しています。含有水分量によって、同じ1キロあたりの容量が変わるため、湿度の違いに気付きやすくなります。また、空気中の湿度が高い雨の日などは圧縮作業を行わないように指導し、徹底した湿度管理を行っています。品質基準が定まっていないココピートは一般的に、5キロブロック、グローバッグ、スラブなどの製品がありますが、いまだに製品の品質基準が整理されておらず、ほとんどの場合、EC値とキロあたりの生産量の基準をクリアすれば出荷されているのが現状です。 一部の直輸出業者を除いては、サプライヤーも製造業者も、ECやpH(測定基準)、含気率、老化した原料の識別、湿気による圧縮された製品の重量、膨張、貯蔵寿命への影響などの測定パラメータについての知識が乏しく、一定の品質基準にそった生産を行っていません。それが、EC値や培土の膨張度合いのばらつきの原因にもなっているのです。Q.ココカラではどのような品質基準をもうけているの?培土にとって大切なことは、健康な根、健全な育成、適切な栄養分、病原菌の排除であり、それらを維持していくことです。そのためには、物理的、化学的、生物学的特性に基づいた管理が必要になります。・物理的特性 : 水分率、嵩比重と粒子比重、植物有効水分、粒径比など・化学的特性:EC値、pH値、CEC値、Na/Kレベルなど・生物学的特性:トリコデルマなど微生物の有無、炭素と窒素比率などココカラでは、物理的、化学的、生物学的特性に基づいたパラメーターを設定して、徹底した管理を行っています。品質管理をする上で差が出るポイントを理解してリスクを防ごうこのように、現在日本の市場に出回っているココピートの品質の差は、原産国における未熟な品質管理と、日本におけるココピートの知識と経験値の浅さに原因があると言えます。 品質管理をする上で差が出るポイントは、上記の3つ以外にも、 ・成熟度の違うココピート粒が混在している・微粉(0.5mm以下のダスト)を除去していない・初期サンプルとバルク製品に違いがある・抜取り検査のみで、全量検査をしていない・買い手の安い希望価格に合わせて品質を落としているなど、生産管理上の問題から、商取引上注意しなければいけない課題など多々存在します。ココピートを購入する際には、原産国の生産管理体制や、輸入元の品質への理解度などについて確認をすることで、粗悪品の購入リスクを防ぐことが可能です。ココカラでは、ココピートを使用する生産者の方々から課題を吸い上げ、共に問題を解決することで、より品質の良い製品をご提供できるよう心がけています。また、ココピートについての知識を共有することで、これからも日本の農業におけるココピートの活用を促進していきます。