植物の生育に適した人工光源としてLED(発光ダイオード)が注目されており、欧米を中心に実用化はますます進んでいます。完全閉鎖型の植物工場での利用事例だけでなく、太陽光利用型の植物工場でのハイブリッド型のLED利用など新手法の取り組みにおいても、LEDの有効性が実証されつつあります。LEDの施設園芸での利用LEDは近年、施設園芸分野で従来の光源に代わる新しい選択肢として注目されています。植物の生育と光植物の生育、光合成には光が不可欠です。従来は自然の光を利用するか、人工の光源を使用しており、従来の人工光源の場合は、可視光全体を広範囲に発光します。LEDのメリット一方、LEDは赤色や青色、遠赤外線などの特定波長の光を放射できます。また、単一の波長の光を発することもでき、植物の要求に合わせた光環境を作り出すことが可能となります。植物は光の波長によって光合成や開花、伸長などの生育反応が変わるため、LEDの利用により、ステージに合わせた最適な光環境が実現できます。また、LEDは高い電力効率と長い寿命、小型で軽量、ランニングコストの低さなどの利点もあります。海外でのLED活用事例LEDの施設園芸利用は、欧米でも着実に広がりをみせています。例えば、栽培実験の実績として、赤色LEDを用いたリンゴの着色促進や、遠赤外線LEDを用いたイチゴの着果促進などがあり、LEDを用いることによる、収量増加や品質向上、開花調節といった効果が確認されています。ここでは具体的な事例を3つご紹介します。事例1:光合成の促進とランニングコスト低下のため|米国での完全閉鎖型植物工場でのレタス栽培米国アリゾナ州にあるRevol Greens社の完全閉鎖型の植物工場では、年間を通じて、レタス、ケールなどの葉物野菜を安定的に生産しており、植物の光合成を最大化するのに適していることから、赤色と青色のLEDを使用しています。LEDは従来の光源より光強度が高く、しかも発熱量が少ないため、生育サイクルが短く高い光強度が必要とされるレタスの場合でも、LEDを活用することは大きなメリットがあります。さらに、完全閉鎖型の植物工場ではLEDの寿命の長さと電力効率の高さが、ランニングコストの低減にもつながっています。事例2:軒が低いことによる課題の解決のため|オランダでのキュウリ栽培オランダのエルゼンドルプにあるGerje社は、25年以上にわたり3haのハウスでキュウリの栽培をしています。軒が低いハウスですが、2008年からハイワイヤー栽培を導入しました。しかし、従来の高圧ナトリウム灯(HPS)を使うと、温室の高さが低いため作物が過剰に熱くなったり、光が十分に行き渡らないという問題がありました。そこで、LED補光システムを7,500平方メートルに導入し、作物の間に2列のLEDユニットを設置。88μmol/m2/sの照度を確保しました。そうすることで、問題は解決され、より活力のある植物体になりました。事例3:周年栽培のため|オランダでのイチゴ栽培オランダ・フェンロに本拠を置くBrookberries社は、20haの温室で年間250万kgの高品質いちごを生産する大規模農園です。4棟の温室のうち2棟では、従来の高圧ナトリウム灯(HPS)とLEDトップライトを使い分けています。同社は年間を通じて高品質なイチゴを安定供給することを目指しており、より予測可能な生産工程で、かつ高い収量を実現するためには、LEDによる最適な照明環境が不可欠でした。2018年末に1棟の温室に6,700基のLEDトップライトを設置したことで、年3回の収穫サイクルが可能になり、冬期間も生育を維持できます。このLED照明導入で収穫時期の管理が容易になり、高品質いちごの安定供給につながると期待されています。このように、LEDの施設園芸での利用は欧米の先進事例でその有効性が実証されつつあります。植物工場での完全人工光利用に加え、ハイブリッドLEDなど新たな照明手法の開発も進んでいます。欧米では、より最適な光環境設計を目指した研究開発が精力的に行われているのが特徴です。ココカラのお客様事例:グリーンファーム沖美様2024年6月現在、ココカラバッグCP4を用いてトマトの養液栽培をされているグリーンファーム沖美様(広島県呉市江田島)は、ハウスの一部にLEDを導入しテスト栽培をされています。LEDを導入することにより、栽植密度を高めることが可能です。ハウス内のLED栽培エリアのみ、ココカラバッグのサイズも小さくしています。▲グリーンファーム沖美様のトマトハウスでのLED栽培の様子このように、ココカラバッグはLED栽培にもご使用いただけます。ご検討中の方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。最適な光環境を作り出す可能性LEDは植物の生育制御に有効な光環境を作り出せる可能性があります。太陽光が届きにくい植物工場や冬季の施設園芸への活用が期待されており、エネルギー効率に優れていることからCO2削減にもつながります。しかし、LEDには初期投資コストの高さなどの課題もあります。そのため、適切な光環境設計によって収量アップや品質向上が期待できれば、コストに見合うだけの投資価値が出ると考えられています。参考文献・サイトBantis, F., et al. (2018). Current status and recent achievements in the field of horticulture with the use of light-emitting diodes (LEDs). Sci Hortic 235:437-451. Gerja社の事例Brookberries社の事例Revol Greens社の事例