近年、トマト栽培には市場価格の低迷や燃料費の高騰といった課題が顕在化しています。特に、燃料価格の上昇や出荷価格の低相場が生産者の経営を圧迫しています。このような背景から、トマト栽培における栽培時期を戦略的にずらすことに焦点を当て、成功事例やメリット、デメリットをご紹介します。<目次>コスト上昇と出荷価格の低相場が課題現在、トマト栽培にはさまざまな課題が浮上しています。特に、市場価格の低迷と燃料費の高騰が生産者の経営を圧迫しています。燃料価格の高騰最近では、重油、灯油、LPガスなどの燃料価格が急騰しています。例えば、重油の価格は2021年時点で87円/Lだったのが、2022年には108円/Lと上昇し、特に冬場のハウス栽培で暖房が必要な場合には、栽培コストが大幅に上昇しています。市場価格の低迷トマトの市場への出荷価格は、冬から春にかけて相対的に低くなる傾向があります。特に6月は多くの農家が出荷するため、市場価格が低迷します。一方、夏場の7~10月は市場価格が比較的高いため、夏の4ヶ月間に売り上げを伸ばすことが利益を上げるカギとなります。※ 出典:「トマト卸売価格の推移」(農林水産省) 促成栽培と抑制栽培こうした課題の背景から、多くの人はできるだけコストを抑え、高い時期に販売して利益を増やしたいと考えるでしょう。そのためには、無理のない時期に作り、栽培時期と出荷時期を調整して需要の高い時期に販売するのが理想的です。栽培時期と出荷時期をずらす栽培方法には、促成栽培と抑制栽培があります。促成栽培は、通常の時期より早めに収穫、出荷する栽培方法です。主に、暖かい地域のハウス栽培で行われる方法です。一方、抑制栽培は、通常の時期よりも遅らせて栽培する方法です。高冷地などの夏が涼しい地域などで行われる方法で、播種や定植時期を遅らせて行います。【事例】気候を生かして栽培時期をずらす現在、ココカラバッグCP4を用いてトマトの養液栽培をされている中上さんに、具体的な事例を伺いましたので、ご紹介いたします。兵庫県三田市の中上農園では、標高300mという冷涼な気候を活かして、トマトの栽培・収穫の時期を遅らせる「抑制栽培」に取り組んでいます。以前は長期多段どりを行っていましたが、地形的な問題や冬場の気温上昇の難しさから、この方法ではなく、燃料費のコストを削減し、需要が高まる時期に出荷する方針に転換しました。定植時期はこれまで11月でしたが、冬季の暖房費の増加を避けるため、冬作をやめ、定植を2月上旬に変更しました。4月上旬から収穫を開始し、6月20日まで出荷を行なっています。その後、3、4日で一気に前作の片付けをし、6月下旬には再び定植し、販売価格の高いお盆明けから需要が高まり相場が高い9月や10月に出荷を続けます。この作型に変更したところ、販売価格は2倍に増加しました。▲(左)栽培時期をずらすメリットを教えてくださった中上さん /(右)標高300mの所に建つ中上さんのトマトハウス栽培時期をずらすメリットとデメリット栽培時期をずらすことには、いくつかのメリットがあります。例えば、出荷価格の高い時期に出荷ができ、地域の気候を活かして燃料コストを抑えられます。しかし、デメリットもあります。地域の気候と異なる方向に時期をずらして作付けを行う場合、追加のコストが発生してしまう可能性があります。たとえば、ハウスやトンネルといった基本的な設備にかかる費用や、ハウス内の温度や湿度を調整するためのボイラーなどの設備費用、またそれらのランニングコストも発生します。また、高冷地での夏場の栽培には、高温対策の換気や遮光、気化冷却などの資材や設備が必要になります。栽培時期をずらぜば必ずしも収益が向上するわけではありません。栽培地の気候や出荷先の状況、必要な資材、省エネへの転換などさまざまな側面から考慮して、どの時期にどの作型で栽培し、どこへ出荷するのか、個別の戦略を慎重に立てることが重要です。高品質なココピートを扱うココカラでは、ココピートを用いた栽培はもちろん広く施設栽培に関するご相談を承っております。是非お気軽に下記フォームからお問い合わせください。お問い合わせフォームはこちら