目次サーキュラーエコノミーとは近年、環境問題や資源の有限性への認識が高まる中、「サーキュラーエコノミー(Circular Economy: CE)」という新しい経済モデルが注目を集めています。2015年に欧州委員会が発表したこのモデルは、従来の線形経済モデルや3R型の取り組みを超えた、循環型ビジネスのあり方を提示しています。サーキュラーエコノミーとはサーキュラーエコノミーは、1994年にイギリスのジョン・エルキントンによって提唱された「トリプルボトムライン」の考え方を基礎としています。これはビジネスの成功には経済的側面だけでなく、社会的・環境的側面への配慮が不可欠だという考え方です。この考え方をもとにフランスの環境サービス会社が提唱したサーキュラーエコノミーは、循環型経済と訳され、従来の線形の経済モデルや3R(リデュース、リユース、リサイクル)型モデルとは異なる、循環型のビジネスモデルを目指す考え方です。このモデルは物質の循環と付加価値の循環の両方を重視しており、現在では、欧州において産業競争力の強化や雇用創出のための重要な産業政策として位置付けられています。「アップサイクル」や3Rとの違いこれまでの経済モデルは「とって、つくって、捨てる」という直線的な流れを前提としていました。そのため、大量生産、大量消費、大量廃棄を引き起こし、短期的な利益追求に偏重しがちでした。そこで、3R(リデュース、リユース、リサイクル)や、資源をより安価なものに再生するのではなく、廃棄物や使用済み製品に新たな価値を付加し、より優れた製品や素材として生まれ変わらせる取り組みである「アップサイクル」が注目されるようになりました。しかし、これは設計、デザインの段階では最終的な廃棄を前提としている点で、完全な循環型モデルとは異なります。そこで注目された「サーキュラーエコノミー」は、事業立案や政策の策定、商品デザインの段階などの設計の段階で、資源の廃棄をなくすことを目指し、自社または社会の中で資源を永続的に循環させる仕組みを作り出します。サーキュラーエコノミーの実現には、従来のビジネスモデルからの大幅な転換が不可欠です。また、使用するエネルギーや、サプライチェーン全体の透明性の確保など、産業システム全体を見直していく必要があります。サーキュラーエコノミーの5つの実践モデルサーキュラーエコノミーには具体的にどのような実践モデルがあるのでしょうか。5つのパターンを紹介します。1. 再生可能な原材料を利用サーキュラーエコノミーの具体的な実践モデルのうち、基本的なパターンの一つが「再生可能な原材料の利用」です。従来の製品では、接着剤の使用や複数素材の混合、複雑な解体工程などが、リサイクルや再利用の障壁となっていました。この課題に対し、製品設計の段階から工夫を行うことで解決を図っています。例えば、接着剤を使用せずに組立可能な構造設計の採用や、単一素材での製品製造、さらには解体・分別工程を最小限に抑えるモジュール設計の導入などが挙げられます。2. 廃棄前提だったものを再利用サーキュラーエコノミーのパターンとして、従来は廃棄を前提としていた資源を、設計段階から積極的に活用する方法があります。例えば、都市鉱山(アーバンマイニング)の概念を活用し、廃棄される予定の資材を建築材料として再利用したり、食品廃棄物を主原料とした飲食店の運営、農業残渣を製品化といった取り組みが該当します。ここで重要なのは、再利用や製品化にとどまらず、循環型の視点を取り入れることです。具体的には、製品を修理可能な設計とし長期使用を可能にすることや、廃棄物の発生を最小限に抑える製造プロセスの採用、そして解体・分解が容易な設計により次の製品サイクルでの再利用を可能にすることなどが含まれます。3. 製品寿命の延長修理を前提とし、寿命を長くする製品の設計もサーキュラーエコノミーの重要な要素です。そのためには、修理専門のスタッフの育成や修理ができるシステムを構築する必要があります。4. シェアリングプラットフォーム各個人や各会社が保有している製品を、地域内で貸し借りを促進するためのプラットフォームなどもこれに当たります。所有から利用へという価値観の転換を促すこともサーキュラーエコノミーの重要な視点です。5. サービスとしての製品サーキュラーエコノミーの重要な実践モデルの一つが、製品のサブスクリプション(サービス化)です。その例として、フィリップス社の照明器具事業が挙げられます。同社は従来の販売モデルから、光量に応じて課金するリース式ビジネスモデルへと転換し、製品の長寿命化とリサイクルの促進を実現しました。このモデルは、メーカーと利用者の双方に大きなメリットをもたらします。フィリップス社にとっては、従来の「計画的陳腐化」(製品を意図的に一定期間で故障させ、自己修理を困難にする設計)から脱却できました。製品の所有権と廃棄物処理の責任を保持し続けることで、半永久的に使用可能な製品開発が実現可能となり、さらに返却された製品の再利用も可能になりました。一方、利用者側にとっては、特に大型オフィスなどの場合、高額な照明設備の初期投資を抑制できるという大きな利点があります。このように、サブスクリプションモデルは、持続可能な資源利用と経済的合理性を両立させる有効な手段となっています。サーキュラーエコノミーの課題サーキュラーエコノミーは、経済・社会・環境の調和を目指す理想的なモデルですが、その実践には多くの課題が存在します。この課題は「サーキュラーエコノミーバリア」として認識されており、様々な側面で現れています。制度面では、再生材の利用や製品設計に関する法的枠組みが十分に整備されていないことが大きなバリアとなっています。また、経済・市場面におけるバリアは、製品回収システムの非効率性により、メーカーが自社製品を効果的に回収することが困難な状況があります。また、再生材の高付加価値への用途での活用が限定的であることも、市場の成長を妨げる要因となっています。さらに、資源価格が低水準にとどまっていることで、リサイクル資源の輸送コストが相対的に高騰し、経済的な実現可能性を低下させています。技術・品質面においてもバリアが存在します。高品質な再生材を確保するための選別技術の開発が必要とされています。社会や文化的な面では、再生材に対する品質への要求が極めて高く、これがバリアとなっているケースも見られます。これらのバリアが複合的に作用した結果、多くの場合において焼却による熱利用が優先的に選択されているのが現状です。しかし、これらのバリアに直面しながらも、サーキュラーエコノミーへの移行は資源の不足や気候変動対策を考えると避けられない社会的要請となっています。現状では、サーキュラーエコノミーの実現には多くの課題が存在しますが、各プレイヤーが協力し、適切に対応していくことが今後ますます重要になってきます。ココカラ合同会社が生み出すサーキュラーエコノミーココカラ合同会社は、持続可能な農業を目指す企業として、サーキュラーエコノミーの仕組みづくりに取り組んでいます。国内における使用済みココピートの再利用化の仕組みについては、特に地球環境保護への関心が高い生産者の方々がリードして取り組みを進められています。農業を起点とするサーキュラーエコノミーの持続的な発展を日本各地に拡がる生産者の方々と共創できればと考えております。SDGsやサステナビリティにおいては、持続的な農業を可能とする環境づくりに向けて、メーカーも生産者も同じ目線に立ち、常に関心を高く保つことが大切であると考えております。今後も、継続的に新たなパートナー生産者の方々とともに、地域が活性するサーキュラーエコノミーへの挑戦を続けていきます。詳細に関するプレスリリースはこちら→https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000077156.html参考塚原 沙智子,2024,日本における循環経済への移行障壁(CEバリア)の特定安居 昭博,2021,サーキュラーエコノミー実践: オランダに探るビジネスモデル,学芸出版社