<目次>農業は自然や植物と対峙しているため、すべての作業や管理をマニュアル化、またはDX化(デジタルトランスフォーメーション化)できるとは限りません。しかし、状況によって変動する項目をできる限り減らすことは、栽培上だけでなく経営上、労務管理上においても重要です。今回は、園芸施設で作業する人たちの「働き方」に焦点を当てます。施設の集約化が進み、人材不足という課題がありながらも、マニュアル化やDX化をすることによって作業者として働く人たちが生活でき、「ワーカー」が職業の一つの選択肢となっているオランダの施設園芸を紹介します。オランダ園芸施設の労務管理オランダでは園芸施設内の栽培環境を制御するだけでなく、働き方も可能な限り仕組み化しています。近年トマトやパプリカでは10ha以上のハウスが一般的になっており、それより大きいメガハウスも増えてきました。雇用人数はハウス1haあたりで5名程度(半分弱が選果場での作業)が一般的なため、10ha以上の規模の場合は50人以上が作業していることもあります。パートタイムや農繁期など一時的な臨時雇用については、EU域内など海外からの季節労働者が多く、人材のシェアリングによってその日に作業をする人が変動します。そのため、各作業者の進捗状況の管理のためにはそれぞれが入力端末を持ち、収穫の作業時間や作業量の計測、また選果施設や出荷施設で出荷量や品質も含めて確認しています。ICT による作業を記録する管理システムが開発されてきたことを背景に、作業者別・作業別の作業時間を記録・解析することで作業者ごとの作業時間のバラツキがわかるようになりました。このような労務管理データは、人事評価などで活用されるにとどまらず、ハウス内の環境データ、植物の生育データ、収量・品質データを統合して、ハウス管理の方向性や作業工程を決定するのにも役立ちます。施設園芸の人材シェアリングの仕組み化人材不足という課題解決のために、オランダ最大手トマト生産者 4 社によって園芸、農業、生産、物流、テクノロジーなどの農業に特化した人材派遣会社を設立、所有しています。これは、集約化された大規模経営農家が多いオランダでは、多くの作業する人も必要であるため、必要な時期に必要な人数のプロフェッショナルな作業者を派遣するためです。人材が不足しがちな選果場への人材仲介も行っています。また、他国からの作業者が安心できるよう住宅を手配する不動産会社も最大手施設園芸企業が共同で所有しています。オランダで作業者が職業の選択肢である理由「働き方」を可能な限り仕組み化することによって、特に施設園芸で果菜類を栽培するときに重要な葉かきや収穫作業などの日々の大切な作業をする人たちにとっても働きやすい環境を作ることができます。作業者にとって、一定程度の生活ができる収入が得られるため、施設園芸での作業者は職業として一つの選択肢となっています。雇用の状況と担当する作業オランダの農業経営体に常に雇用されている人は2013 年には5万9820人でした。常時雇用に占める女性比率は半分弱です。施設園芸は雇用されている人数が多く、家族経営に加えて複数の常時勤務が雇用されています。また、おおよそ常時雇用の2倍程度の臨時雇用し、農作業の繁閑に対応しています。園芸ではトマト,パプリカ,キュウリなどの果菜類を温室で栽培しており、年間を通じた農作業の繁閑差は大きくありません。しかし、1 日のうち収穫の時間帯や出荷調整の時間帯に作業が集中します。そこで、臨時雇用の作業者が、収穫や出荷調整といった比較的すぐに習得できる作業を担当しています。作業者の時給と収入農業での1週間の標準的な労働時間は38時間で、農作業の繁閑に合わせて延長できる仕組みがあります。雇用人数オランダにおける農業の常時雇用の時給は2013年時点ですが15ユーロ程度、臨時雇の時給が 18、19ユーロです。オランダの時給は欧州で中程度の高さです。現在はインフレによって全産業で1.3倍程度時給が上がっています。そのため、時給もそれぞれ1.3倍程度上がっていることが考えられます。園芸の常時雇用の場合、年収は2013年時点31,237ユーロ(約460万円)程度ですが、こちらもインフレによって1.3倍程度上がっています。臨時雇用の場合も、平均時給は日本の約2倍で、オランダの農業経営は、日本よりもはるかに高い水準の時給を臨時雇へ支払っています。そのため、1日8時間、月に20日働けば1カ月で3000ユーロ(約45万円)ほどの収入です。もちろん季節性があったり、8時間も働いていなかったりする可能性もあります。また、物価や為替の相違もあるので単純比較は難しいですが、いずれにしても日本におけるパート従業員より臨時雇用の作業者の時給が高いことはわかります。作業者への負担軽減のためにもヤシ殻培地のDX化を進めましょう農場マネージャーではなく、農場で作業をする人たちにとっても職業の選択肢として考えられる産業になるためには何が必要でしょうか。また、将来的に日本でも人材シェアリングが一般的になった場合、「はじめて農場にやってきた人」も作業がしやすいようにするためには何を整備する必要があるでしょうか。ココカラのヤシ殻培地は、その一つの手助けになると考えています。たとえば、圧縮培地は軽いので女性などでも扱いやすく、重いものを運ばなくていいので作業性が高いです。また、ココカラのヤシ殻培地は品質が均一なのでかん水管理がしやすく、これを作業者にもわかりやすい培地の設置方法やかん水管理もマニュアル化やDX化マニュアル化することでわかりやすく負担がかかりにくいことが期待できます。今後、人材派遣のような形で作業をする人が日々変化することも考えられます。培地を含めてマニュアル化できる点については整備をしていくことが大切です。参考『オランダの農業と就業構造』(一瀬裕一郎)『施設園芸先進国オランダの現状と技術開発』(斉藤章)