人工知能(AI)を活用した施設園芸 −キュウリ・トマト編−

人工知能(AI)を活用した施設園芸
−キュウリ・トマト編−

 

将来的に、農業・施設園芸分野では『少ない人数で、収穫量を上げる』ことが課題になります。そのためにはロボティクスや、人工知能(以下AI)を活用して、データとアルゴリズムに基づき生産者が決定をする時代がやってくるでしょう。前回解説した『自律栽培』を実現するために、2018年よりオランダで実施されているのが、AIとセンサーでの温室自動制御に関するプロジェクトです。今回はそのプロジェクトを紹介します。

AIを用いたキュウリ栽培プロジェクト

 

ワーヘニンゲン大学研究センター施設園芸技術部門科学研究チームリーダーのシルケ・ヘミング博士は、2018年8月より『AIとセンサーでの温室自動制御に関する国際的チャレンジ』の実験を開始しました。これは各チームに条件が同一の96m²の区画を設置し、AIを使ってチームごとに施設内のモニタリングや環境制御を実施し、4チームで結果を競い合うものです。

 

チャレンジの評価ポイントは?

評価のポイントは、収穫されたキュウリの販売価格からエネルギーコスト、水道代、労働力などコストを差し引いた『純利益』、アルゴリズムの新規性と園芸分野への適応性、手動でなくリモートで作業ができる自律性、追加センサーや情報を追加せず動作が可能な安定性、大規模圃場に容易に実装できる拡張性などの『AIの使用』、キュウリ1kgに使用される水の利用効率、二酸化炭素投入量、エネルギー利用効率、登録農薬の使用量などの『持続可能性』から評価されました。

 

参加チームは?

オランダ施設園芸会社で構成されたチーム、Intelとメキシコの大学チーム、Tencentと中国の大学チーム、オランダ在住で中国出身の学生と研究者からなるチーム、そしてMicrosoftとデンマーク、オランダの学生チームで競いました。さらに比較圃場として、オランダの生産者がAIを使用せずキュウリを栽培しました。

 

チャレンジのルールは?

はじめに、各チームはカメラやセンサーを選定しました。そしてAIアルゴリズムで制御のセットポイント情報を入力し、コンピュータがセンサーから受信した情報をもとに灌水、ヒーティング、二酸化炭素供給、人工ライト、スクリーンや天蓋の開閉などを設定。チャレンジ中は、各チームはAIに指示を受けた項目のみ作業を実施しました。

 

AIキュウリ栽培チャレンジの結果はベンチマークに

 

Microsoftとデンマーク、オランダの学生のチームが優勝しました。優勝したチームのキュウリは、1kgあたり水の利用効率が4.91L、二酸化炭素投入量が0.20kg、エネルギー利用効率が3.59kWh、熱量の利用効率が2.49kWh、登録農薬の使用量が0.35mlで、持続可能性の要因も優れていました。
 
このチャレンジはベンチマークとなり、その後の研究やアルゴリズム開発に活用されます。

 

AIを用いたトマト栽培プロジェクト

 

さらに2019年から、AIを使ったトマトチャレンジも開始しました。このチャレンジでは、AIアルゴリズムを使用して、実際の施設内で実験を行います。AIでパラメータを設定し、水、肥料、エネルギー、CO2の投入量を最小限に抑え、かつ生産量と品質を最大限に高め、純利益の最適化を目指しました。

 

AIアルゴリズム調整のプロセス

各チームは、実験の開始時に独自のセンサーとカメラを設置し、追加の作物、気候など関するパラメータを測定しました。それぞれの情報は、デジタルインターフェイスを介してチームが受け取り、同時にAIアルゴリズムに基づいて、設定値をコンピュータに送り返します。コンピュータは、最終的に施設内でアクションを起こすよう指示を出し、チームは温室に入らず、すべてのデータをリモートで抽出し、ソフトウェアのアルゴリズムを調整しました。このようにして、ソフトウェアは徐々に人々の決定を学習していきました。

 

純利益は1m²あたり6.86ユーロ(約830円)

12月中旬に定植したAxianyという品種のチェリートマトは、3月17日にはじめて6つの温室すべて(5チームと、比較のために実際の栽培者チーム)で収穫されました。最初の収量は、0.01〜0.32kg/m²で、ほぼすべてがクラスAのトマトでした。
 
6月8日にチャレンジが終了し、施設園芸メーカーのVan der HoevenとHoogendoorn、TU Delftの学生、民間育種会社KeyGeneのメンバーで構成されたチームが優勝しました。同チームの純利益は、1m²あたり6.86ユーロ(約830円)と最も高く、資源活用量も最も少ないと、高い評価を得ました。
 
AIを活用した作物の栽培は、オランダにおいてもまだ完全に確立された技術ではありません。しかし栽培実験を繰り返し、ベンチマークを設定し、改良を重ねていきます。今後もスポンサーが見つかれば、チャレンジを継続していくそうです。ご興味ある方は情報を追ったり、または参加者として申し込んでみたりするのも面白いかもしれません。

 

<参考サイト>

 

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