未来の園芸コンセプト“Autonomous cultivation(自律栽培)”

未来の園芸コンセプト“Autonomous cultivation(自律栽培)”

 

コロナウィルス禍において、世界中で接触の程度を減らす『フィジカルディスタンシング』が継続されています。また以前から、日本をはじめ世界でも生産者や農業現場で働く人の数は減少の一途をたどっており、一経営体あたりの圃場面積も増加しています。一方で、社会が成熟化するにつれ園芸作物の需要は高まっています。
 
このような背景から、『少ない人数で、収穫量を上げる』ことが農業でも施設園芸でも共通の課題です。施設園芸先進国のオランダでは、Autonomous cultivation(自律栽培)と呼ばれるコンセプトが注目を集めており、未来の農業のためには回避できないという見方もあります。そこで今回は、『自律栽培』について解説します。

自律農業・自律栽培とは

 

近年、露地栽培や畑作においてもAutonomous farming(自律農業)という概念が注目されています。基本的なコンセプトは、以下の4点です。

 

  • 事前に定義したトリガーに対して、定義された方法で反応して一連の行動をとること
  • 長時間無人でタスクを遂行できること
  • 使用者、周囲の人に安全であること
  • 園芸、農業、公園、林業などの複雑な半自然環境と相互作用しているため、複雑な状況下で正しく動作するために、高度なセンシングと制御システムを使用すること

 

『自律農業』の代表例は、無人トラクターや自動運転などで、繁忙期の少ない人数で作業をすることが目的です。

 

自動給餌機

一方施設園芸では、『自律農業』のうち『自律栽培』のコンセプトが適用されています。どちらも、労働力の削減と、高い収穫量を目指す点では類似しています。『自律栽培』は、3つのステップに分類できます。

 

  • 感覚(センサー)
  • 分析(AI)
  • 行動(ロボット)

 

オランダだけでなく日本でも、すでに①感覚(カメラ、センサー)と②分析のうちのデータを使用して、温室の多くをリモートで制御ができますし、一部では③行動(ロボット)も適用されています。

 

収穫ロボット

さらに2018年より、オランダでは②分析のステップにAI(人工知能)を活用する栽培実験が実施されています。これは自律栽培の『分析』のステップに焦点を当て研究を続けることで、センサーとの接続や、分析に基づいたロボット工学を探求し、自律栽培の3つのステップを実現するためです。AIの栽培実験については、次回紹介します。

 

自律栽培のメリットは

 

自律栽培が実装された場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。もちろん労働力の削減に貢献しますが、その他に栽培に関する知識の不足から良好な結果が出ない生産者や、新規就農者の助けになります。また、栽培面積を拡大することが今より容易になり、さらにデータ主導のアプローチで客観的な意思決定ができるようになります。

 

最適な環境が、植物の可能性を引き出す

 

ただし留意しないといけないのは、自律栽培が『手段』ではなく『目的』になってしまわないようにすることです。そしてAIと、栽培者の経験の組み合わせが不可欠であることも忘れてはいけません。
 
オランダでは、健康的な食を作るのは技術や設備ではなくあくまでも『植物』で、知識が収量のアップにつながると言われています。環境を最適に管理するとともに、植物本来の特性と可能性を最大限に活用して利益を生み出す『グリーンフィンガー(注:高度な農業の知識や専門技術を備え、植物を栽培する才能)』を持つ生産者を目指しましょう。

 

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