培地の使用時に考える「根」環境の大切さ③ 微生物と根環境

培地の使用時に考える「根」環境の大切さ③
微生物と根環境

 

健康な作物を栽培するためには、健康な「根」が必要です。そのため「根環境」を意識し、最適な状況にすることはとても大切です。
 
根環境を整えるためには、栄養成分の状況や水分管理など「物理性」や「化学性」の側面を考慮することはもちろん、微生物環境に関する「生物性」についても考える必要があります。
 
土壌における根環境の研究は長年行われていますが、養液栽培の培地における根環境、特に生物性の側面に関しては、研究途中です。しかしオランダでは、これらの知識が増えつつあります。そこで3回シリーズで、培地使用時の根環境についてご紹介します。第3回は、培地内の「根環境から考える生物性の微生物とバクテリア」について説明します。

 

培地内の微生物

 

土壌ではなく養液栽培の培地内にも微生物は存在するのでしょうか?
 
養液栽培において、栽培初期は培地内の微生物の活動は、とても少ないことが実情です。またこの時期は、培地内の微生物は量や種類は変化しやすく、脆弱です。ただしこれは、土壌での栽培と比べて養液栽培が「不毛」だという意味ではありません。
 
バクテリアや真菌胞子などの微生物は、空気中を含めていたるところにいます。そのため栽培の回数を重ねるごとに、根や死滅した根から微生物が分泌され、培地内の微生物は多様になっていきます。根1gにつき、1億から10億の微生物がいるそうです。栽培を重ねるごとに、どのバクテリアや真菌が培地内に落ち着くかにより、その後の栽培に影響を与えます。
 
ちなみに排液の再循環のために、UV等を使用して消毒しますが、これは微生物の組成に影響を与えることはないとする研究結果があります。

 

有益なバクテリア

 

それでは養液栽培での生物性を上げるために、何かできることはあるのでしょうか?培地に有益なバクテリアを追加すると、微生物活性に影響があるとの研究結果があります。オランダのワーヘニンゲン大学Plant Research Internationalは、有益なバクテリアとして根粒菌(※マメ科植物の根に根粒を作り、大気中の窒素をアンモニア態窒素へ変換し、窒素固定を行う)で実験をし、根粒菌がトマトとキュウリの栽培時に存在すると、準最適な温度でも5〜10%増しで生育したという結果が出ました。
 
これらの土壌微生物は、土にとって重要な役割を果たします。根と微生物の共生関係も忘れてはいけません。菌根菌などは植物にとって、リン酸のような栄養素の吸収を促すメリットもあります。また培地内の微生物環境を整えることで、根が病原菌から守られると言われていますが、培地内の微生物活性に関しては、研究途中のものが多く、分かっていないことが多々あります。しかし世界各国の研究により、少しずつですが確実に、これらに関する知識が増えています。

 

根環境に最適な培地は?

 

シリーズの最後に、「根環境から考えて、最適な培地は何か?」について解説します。この答えは「すべての点で、パーフェクトな培地はない」つまり採用している栽培方法や、灌漑システムに合った培地を選択することが、最大の結果を目指すことにつながります。
 
では具体的に、培地ごとにどのような特徴があるのでしょうか?

 

有機培地のココピートやピートモス

ココピートやピートモスなどの有機培地は、栄養吸収のバッファーがあることが最大のメリットです。養液中の大きな変動に、ゆっくり対応していくイメージです。つまり多少管理を間違えたとしても、すぐに大きな影響を受けないとも言えます。

 

無機培地のロックウール

一方で無機培地のロックウールは、栽培中に培地中の栄養状態を変更すると、すぐに適応することがメリットですが、間違った管理をした際にもすぐに影響を受けてしまう点がデメリットとも言えます。最新の精密施設と戦略で管理しているオランダでは、ロックウールでの栽培が多いですが、必ずしもすべての国や栽培状況においてベストな選択だとは言えません。それぞれの栽培方法や施設に合った培地を、賢く選びましょう。(関連記事:知っているようで知らない、ココピートとロックウールの違い有機培地ココピートとピートモスの特徴と使用上の注意

 

「根環境」シリーズの最終回です。ご興味がある方は「第1回:酸素と灌水管理」と「第2回:ECとpH」もご一読ください。

 

<出典>

  • In Greenhouses(No.3 August 2019)

 

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