作物の品質が安定する「根」環境の整え方

作物の品質が安定する「根」環境の整え方

 

安定した品質の作物を栽培するためには、健康な「根」が必要です。そのためには「根環境」を意識し、培地を最適な状況にすることはとても大切です。

根環境を整えるためには、栄養成分の状況や水分管理などの「物理性」や「化学性」の側面を考慮することはもちろん、微生物環境に関する「生物性」の3つのバランスを考えて、管理する必要があります。
土壌における根環境の研究は長年行われていますが、養液栽培の培地における根環境、特に生物性の側面に関しては、研究途中です。しかし、オランダでは、これらの知識が増えつつあります。ここでは、根環境を健康に維持するための3つの方法について解説します。

  1. 根環境における酸素供給と灌水管理法(物理性)
  2. 根環境におけるECとpH(化学性)
  3. 根環境における微生物とバクテリア(生物性)
根環境

1.根環境における酸素供給と灌水管理法(物理性)

 

まずは、健康な根環境を整えるために必要な保水性・通気性などの「物理性」から解説していきます。
ココピートを含めた培地で栽培をする場合は、培地への酸素供給は不可欠です。 例えばキュウリやトマトは、1時間ごとに、根の重量1gにつき0.2 mgの酸素を必要としています。圃場面積が1m²の場合は、根の重量1kgに対して、酸素は1時間で最低でも200mg必要ということです。ではこれらの酸素は、どこから供給されているのでしょうか。

酸素の供給源:水

灌水する水には、酸素が含まれています。圃場1m²あたりに1時間で水を1リットル供給すると仮定すると、水からは最大でも9mgしか酸素が供給されていません。

酸素の供給源:空気

それでは根が必要とする200mgを補うためには、どこから酸素を供給すれば よいのでしょうか?この不足分である191mgは、空気から供給されます。しかしこれは、ただ単に通気を増やせばよいという意味ではありません。「“培地内”に、完全に飽和していない空気が十分あること」を目的として管理をする必要があります。

培地内の湿度を観察

 

これを見極めるためには、培地内の湿度を観察する方法があります。例えば、培地内の湿度が70〜75%以下の場合、多くの培地では酸素不足が起こっています。
それぞれの培地の含水量は異なりますので、事前に確認し、作物に適した製品を選びましょう。(cococaRa製品の含水量について
また小さい粒が多いココピート製品を使用は、空気含量が少なく、湿度が高くなり酸素不足になります。粒の大きさによって空気含量が変化しますので、こちらも事前に確認する必要があります。
▼関連記事 ココピートを選ぶ3つの基本。安定収量を実現するための選定基準と見極め方

灌水管理で培地の含水量を調整

 

培地内の酸素量を考慮しながら、適切な湿度を保つことで根環境が整います。そのためには、灌水の管理が大切です。
よく議論になるのは、灌水の量と回数についてです。「少量の水を多くの回数」もしくは「大量の水を少ない回数」どちらが最適な根環境を維持できるのでしょうか。

「少量の水を多くの回数」のメリットとデメリット

 

「少量の水を多くの回数」灌水するメリットは、コンスタントに水分が供給されるため、培地内に塩分の蓄積が少ないことが挙げられます。
しかしデメリットは、灌漑システムがあまりうまく機能しない場合、培地が水分不足に陥りやすいことです。さらに植物が必要としている水分と、灌水の最適な量や頻度を探し出し、管理をする必要があるため、複雑な灌水の戦略が必要です。
※cococaRaは、こちらの灌水方法を推奨しています。

「大量の水を少ない回数」でも大差ない?

 

一方で「大量の水を少ない回数」の灌水をする場合、培地からすぐに水が流れ出てしまうというデメリットがあります。
しかしオランダの研究では、培地中のECの平均が同じ場合「大量の水を少ない回数」で灌水する「スタンダードな灌漑」でも、「少量の水を多くの回数」灌水する「精密な灌漑」でも、結果に大差がないことを報告しているものも多くあります。灌水システムを含めた環境制御システムが最新で、精密な戦略を立てて制御している場合であれば少量多回数が効果的ですが、そうでない場合は灌水に関しては、あまり気にし過ぎる必要はありません。

2.根環境におけるEC・pH(化学性)

 

ここからは、培地内の「化学性」であるECとpH」について説明します。

最適なEC管理は安定収量・味の安定にも繋がる

 

根環境を最適なECで管理すると、トマトの風味がよくなると言われています。またリン酸を制限して、培地を緊密に管理することで、雑草を抑制できます。

日射量によって変化するECを調整

 

植物に水分が供給される場合、根から吸収された内の90%は蒸散してしまいます。残りの10%が、植物の水分含量を増やすことに使われます。ただし日射量が増えると、光合成より蒸散が盛んに行われるため、水分含有量が低下します。
特に光合成システムが飽和状態の間は、日射量の上昇とともに蒸散が増えます。日射量が多い日中などは、養液の灌水量を増やし、培地ECを下げることが賢い選択です。日中はECを下げ、夜間はECを上げることが重要だとする研究結果が多くあります。日射量に合わせてECを調整しましょう。
また製品ごとにばらつきがなく、ECが均一な培地を選択すること大切です。(cococaRa製品のECについて

pHを作物に適した数値へ

 

pHは、植物が栄養成分を吸い上げる点で多くの影響を与えます。phの高・低による培地内の状態は以下の通りです。

pHが高い場合

pHがかなり高い場合は、鉄やマンガン、亜鉛、ホウ素、リン酸、銅が十分に吸収されません。またフザリウム菌とフミコーラは、pHが高い場合は優勢になります。

pHが低い場合

pHがかなり低い場合は、モリブデンやカルシウム、ホウ素の吸収に問題が出ます。培地が酸性の場合もまた、それらが病原体になりうるため注意が必要です。
作物に適していないpHで根環境を管理をしていると、沈殿物で灌漑システムが詰まる恐れがあります。培地に関しても、例えばロックウールは、pH5.0以下になると根が茶色になり、pH4.8以下で崩れ、pH4.5以下で植物が死滅します。根環境のpHが適正でない場合、養液でpH を調整してください。

pHと硝酸塩・アンモニア性窒素の関係性

 

さらに重要なのは、硝酸塩とアンモニア性窒素の関係性に注意を向けることです。
植物が硝酸塩を吸い上げる時に、埋め合わせとしてアルカリイオンを分泌します。その結果として、pHが上昇します。またアンモニア性窒素が吸い上げられる時に、酸性イオンが分泌され、pHが下降します。これらの変化が、常に根の周りで起こっていることを理解することが大切です。
植物は、アンモニア性窒素の吸収を好みます。その結果として、灌水チューブに近い部分と遠い部分でpHが異なります。窒素肥料の施用には注意しましょう。

生育ステージごとのphの変化

 

また植物の生育ステージごとに、培地のpHは変化します。例えば多くのバラが一度に収穫された場合、植物は多くの硝酸塩を吸い上げ培地中のpHが急上昇します。

作物によって異なるpHへの影響

 

またトマトは、実の肥大時に比較的多くのカリウムを吸い上げ、これがpHに影響を与えます。根は水素イオンを分泌して中性を保とうとするため、培地内のpHが下がります。パプリカの着果や肥大など生育ステージごとにpHが変わるため、それぞれの作物に合ったpHの管理をしましょう。

そして、培地の導入時に、培地pHが均一な製品を選ぶことも大切です。(cococaRa製品のpHについて

3.根環境における微生物と根環境

 

ここからは、根環境を整えるための要素の一つ、微生物環境に関する「生物性」について、解説していきます。

そもそも、土壌ではなく養液栽培の培地内にも微生物は存在するのでしょうか?
養液栽培において、栽培初期は培地内の微生物の活動は、とても少ないことが実情です。またこの時期は、培地内の微生物は量や種類は変化しやすく、脆弱です。ただしこれは、土壌での栽培と比べて養液栽培が「不毛」だという意味ではありません。
バクテリアや真菌胞子などの微生物は、空気中を含めていたるところにいます。そのため栽培の回数を重ねるごとに、根や死滅した根から微生物が分泌され、培地内の微生物は多様になっていきます。根1gにつき、1億から10億の微生物がいるそうです。栽培を重ねるごとに、どのバクテリアや真菌が培地内に落ち着くかにより、その後の栽培に影響を与えます。
ちなみに排液の再循環のために、UV等を使用して消毒しますが、これは微生物の組成に影響を与えることはないとする研究結果があります。

根環境に有益なバクテリア

 

それでは養液栽培での根環境の生物性を上げるために、何かできることはあるのでしょうか?
培地に有益なバクテリアを追加すると、微生物活性に影響があるとの研究結果があります。オランダのワーヘニンゲン大学Plant Research Internationalは、有益なバクテリアとして根粒菌(※マメ科植物の根に根粒を作り、大気中の窒素をアンモニア態窒素へ変換し、窒素固定を行う)で実験をし、根粒菌がトマトとキュウリの栽培時に存在すると、準最適な温度でも5〜10%増しで生育したという結果が出ました。
これらの土壌微生物は、土にとって重要な役割を果たします。根と微生物の共生関係も忘れてはいけません。菌根菌などは植物にとって、リン酸のような栄養素の吸収を促すメリットもあります。また培地内の微生物環境を整えることで、根が病原菌から守られると言われていますが、培地内の微生物活性に関しては、研究途中のものが多く、分かっていないことが多々あります。しかし世界各国の研究により、少しずつですが確実に、これらに関する知識が増えています。

根環境に最適な培地は?

 

最後に、「根環境から考えて、最適な培地は何か?」について解説します。この答えは「すべての点で、パーフェクトな培地はない」つまり採用している栽培方法や、灌漑システムに合った培地を選択することが、最大の結果を目指すことにつながります。
では具体的に、培地ごとにどのような特徴があるのでしょうか?

有機培地のココピートやピートモス

 

ココピートやピートモスなどの有機培地は、栄養吸収のバッファーがあることが最大のメリットです。養液中の大きな変動に、ゆっくり対応していくイメージです。つまり多少管理を間違えたとしても、すぐに大きな影響を受けないとも言えます。
▼さらに詳しく知りたい方は「有機培地ココピートとピートモスの特徴と使用上の注意点」へ

無機培地のロックウール

 

一方で無機培地のロックウールは、栽培中に培地中の栄養状態を変更すると、すぐに適応することがメリットですが、間違った管理をした際にもすぐに影響を受けてしまう点がデメリットとも言えます。最新の精密施設と戦略で管理しているオランダでは、ロックウールでの栽培が多いですが、必ずしもすべての国や栽培状況においてベストな選択だとは言えません。それぞれの栽培方法や施設に合った培地を、賢く選びましょう。
▼さらに詳しく知りたい方は「ココピートとロックウールの違いとメリット・デメリットとは
<出典>

In Greenhouses(No.3 August 2019)


 

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